最近、気が付くと目で追っている人がいる。
俺が小学生の頃、桐山家に来たメイドの。
来たばかりの頃から、ずっと俺の面倒を見てくれている。
幼い頃高熱を出して寝込んだ時、まともに動けない俺に口移しで水を飲ませてくれて、
熱が下がるまでずっと傍についていてくれた。
自分に病気がうつるかもしれないのに。
この時から、は他のメイドとは違うと感じていた。
まだ年も若いのに、メイドとしての仕事をちゃんとこなしている。
中でも料理が一番上手らしい。
確かにの作る食事はどれも美味しい。
特に。
得意料理だと言っていた。
他のメイドは、支度を終えると俺が食べ終わるまで食堂から出て行ってしまうのに、
は俺が食事をしている間もずっと傍にいて、学校の事とか友達の事とかいろいろ聞いてくる。
俺もにいろいろ聞かれるのは嫌いじゃないから、その日あった事を話す。
他愛のない事でも一つ一つちゃんと聞いてくれて、笑顔で応えてくれる。
充達の事は家の人間に知られたくなかったが、にだけは話した。
喧嘩の話の時は悲しそうな顔をしていたが「いいお友達が出来て良かったですね」と言ってくれた。
話して良かったと思う。
学校に行く時に弁当を手渡しながら「いってらっしゃいませ」と笑顔で見送ってくれる。
帰宅した時「お帰りなさいませ」と笑顔で出迎えてくれる。
楽しそうに鼻歌を歌いながら食事を作る。
天気の良い日に、たくさんの洗濯物を嫌な顔一つせず、むしろ気持ち良さそうに一枚ずつ物干し竿に干していく。
気が付くと、の事ばかり目で追って、の事ばかり考えている。
を見ていたら、急にの絵が描きたくなって部屋に道具を用意した。
休みの日、窓から庭掃除をしているを見ながら絵を描いた。
いつもなら、完成した絵はすぐ捨ててしまうのだが、の絵だけはどうしても捨てられなかった。
捨てられないけれど、どうしていいか分からなくて部屋の隅に置いておいたのだが、
の誕生日が近いと聞いたので、その絵をプレゼントする事にした。
絵を渡すと、はとても嬉しそうに笑って
「和雄様に描いていただけるなんて光栄です。嬉しい…ずっと大事にしますね」
と言ってくれた。
その時の笑顔は今まで見た中で一番キレイだと思った。
ああ…そうだ…
俺はの笑顔が好きだ。
またの笑顔が見たい。
早くこのゲームを終わらせて帰らなくては…
約束したんだ。
お土産買ってくるって。
何がいいかな、って聞いたんだ。
そうしたらは
「和雄様が無事に帰ってきてくれれば、それでいいです」
と言っていた。
だから、帰らなくては。
撃たれたところが疼いて、何だかとても寒いけれど、必ず帰るから。
俺が「ただいま」と言ったら、きっとはいつもどおり「お帰りなさいませ」と笑顔で出迎えてくれるだろう。
もう一度の笑顔が見たい。
そして…これからもずっと傍にいて欲しいって、に言いたいんだ…
だから…、待っていてくれ…
+ + + + + +
※今回は後書き長いです。スミマセン…※
この作品は、以前私の好きな書き手さんが「誕生日が近いので桐山下さい」とサイトに書かれていたので、
図々しくも捧げさせていただいた物です。
でも、その方ドリ嫌いだったみたいなんですよ(滝汗)
風の噂で「ドリという物を知らなかったので、送られてきた物を開いてみたら(悪い意味で)絶句した。嬉しくなかった」とおっしゃってたと知って、その時初めて自分がやらかした事に気付いたんですよ。
ドリ好きかどうか分からない人にドリを送るのはハッキリ言ってマナー違反ですよね…
当時の私はドリを知ったばかりで、自分自身がドリを読むのが楽しくて仕方なかったし「桐山が大好きな●さんなら、私の文章自体は拙いけど、こんな風に桐山に想われてる話ならきっと喜んでくれる!」という根拠のない自信を持ってしまったんです。
これを読んでる方は、こんなバカな事しちゃダメですよ。
私も時間を遡れるなら、ドリを送ろうとしていた自分を撲殺したいです、マジで。
あくまで噂で聞いたので、本当に自分の事かは今でも分かりませんが、●さんと私は「書き手さんと一ファン」という間柄でしかなかったので真相を聞いていい程親しくないし、その話題を出さないでなかった事にした方がいい雰囲気だったので、噂を聞いた後は私は一切この件には触れないで、今でも「書き手さんと一ファン」の関係でいさせていただいてます(あちらが内心どう思ってるかは分からないですが(汗))。
こういう経緯があったので、この作品はお蔵入りにしてたんです。
今でもこれを見ると自分の愚行を思い出して悶え死にしそうですし。
でも、作品自体は拙いながらも気に入っていたし、●さんも結構前に他ジャンルに移られてしまったので、思い切ってウチのサイトに掲載する事にしました。
「愛慕」と、同じ日に裏にアップした「Birthday Present」は、主人公の性格を捧げた方(二人とも別の人です)に似せて書いたのですが、こっちの方はウチのいつもの主人公とイメージがかなり違っていたので、掲載するにあたって「苺月夜」の月乃宮玲様にお願いして夢小説の主人公のお名前をお借りしました。
月乃宮さんが書く主人公は、桐山の為に自分から何かしてあげようと一生懸命な、優しくて素敵な女性なので、この小説の主人公のイメージにとても近いですし、以前こっそりこれをお見せした時いろいろ嬉しいお言葉をいただいたのでお願いしたんです。
月乃宮さん、他の方に捧げた小説であるにも拘らず、主人公のお名前を貸して下さってどうもありがとうございました。
ボスが主人公を想いながら死ぬ話なので作品解説には悲恋と書きましたが、ボスの主人公に対する想いは恋愛未満だと自分では思っているんですよね。
主人公の方も、恋愛感情は全くないとは言い切れないけれど、そういう気持ちは僅かしかなかったんじゃないかと。
家族愛に恵まれていない桐山に無償の(家族愛に近い)愛をもって尽くしていた…そんな感じかな。
ボスが小学生の時から働いていた、という設定になっているので年齢設定にちょっとムリがあるんですよね(汗)
一応自分では20代半ばで考えてます。
高校卒業してすぐに桐山家で働き始めた、という事にしておいて下さい(苦笑)