昼休み、お弁当を食べ終えた私は屋上に向かった。
授業が始まるまで、屋上の給水塔の上で昼寝するのが好きなのだ。
たまに熟睡して、授業をサボっちゃう事もあるんだけど。
屋上の扉を開けて中に入り、給水塔の梯子を登って上に行くと、そこには先客がいた。
「こんにちは、沼井クン」
「!? 何だか…驚かすなよ」
慌てて吸っていたタバコを隠そうとしたのは、沼井充クン。
校内で知らない人はいない有名不良グループ、桐山ファミリーのNo.2と言われている人だ。
不良なんだけど、同じ桐山ファミリーの笹川クンと違って弱い者虐めなんか絶対しないし(むしろ弱い者虐めをしようとしている笹川クンを
諌めるくらいだ)、女の子には優しいし、その上なかなかのハンサムなので(ボスである桐山クンがキレイ系なら、沼井クンはカッコいい
部類のルックスだ)密かにファンが何人もいたりする。
実は私もその一人なんだけど。
何でクラスが違う沼井クンと顔見知りになれたかというと、私がココで昼寝していた時に沼井クンはタバコを吸おうとココに来て、
たまたま鉢合わせたのが始まりだった。
始業ベルが鳴っても起きなかった私を、ワザワザ起こしてくれたのだ。
その時は半分寝ボケてたのもあったけど、沼井クンと話すせっかくのチャンスだったので、そのまま授業をサボってしまった。
それ以来、時々ココで顔を合わせるようになって、親しく話せる間柄にまでなったのだ。
それ以上の関係になるきっかけが掴めなくて、未だに「顔見知り」止まりなんだけど。
「、昼寝しに来たんだろ? ワリィ、この辺タバコ臭くしちまった」
「いいよ、気にしないで。沼井クンがいるなら寝ないでお話したいし」
「そっか…」
私はポケットにタバコの箱とライターを仕舞う沼井クンの近くに腰を下ろした。
そう言えば、沼井クンは私といる時いつもタバコを吸わない。
気を使ってくれてるのかな?
「沼井クン、タバコ吸いたかったら吸っていいよ。私は気にしないから」
「いや…制服がタバコ臭くなってがセンセーに何か言われたら悪いし。それにタバコの煙は吸ってる本人より、
傍にいる人の方が害が大きいんだぜ」
「副流煙ってヤツ?」
「そう。俺は好きで吸ってるからいいけど、の体の害になって悪いからな」
「ごめんね…気を使わせちゃって」
「が謝る事じゃねーよ。タバコ吸ってるなら当然のマナーだよ」
不良なのにタバコのマナーを気にしてるトコが沼井クンらしいな。
沼井クンのそんな優しいトコが好きなんだけど。
「タバコって…そんなに美味しい?」
「まぁな。吸ってると落ち着くし」
「………私も吸ってみようかな」
「ハァ? 何言ってんだよ。女が吸うモンじゃねーよ。止めとけ」
「あー、その言い方、何か女を差別してるみたいでイヤだなー」
「差別っていうか…だってよ…」
「?」
「その…丈夫な赤ちゃん産めなくなるぞ?」
そう言って沼井クンは顔を赤くして、照れ隠しに頭を掻いていた。
沼井クン…何か可愛いv
「でも、沼井クンの好きなタバコの味、気になるんだもん」
「タバコなんて不味いよ。止めとけ止めとけ」
「さっき美味しいって言ったじゃん。ウソつきー」
「そんなにタバコの味、知りたいのか?」
「うん。ちょっと興味ある」
「……そんなに知りたいなら」
「知りたいなら?」
首をちょっと傾げた次の瞬間、沼井クンの唇が私の唇に重ねられた。
「!?」
間髪入れずに沼井クンの舌が私の口の中にちょっとだけ入ってきて、すぐに引っ込む。
私の口の中に苦い味を残して、沼井クンの唇が離れた。
「これでタバコの味、分かっただろ…」
そう言って沼井クンは私に背を向ける。
沼井クンの耳はすごく真っ赤になっていた。
「分かったけど…私、やっぱりタバコ吸う」
「何でだよ!」
「だって…これから沼井クンとキスする度にタバコの味がするなら、私もタバコの味に慣れといた方がいいかと思って…」
振り向いた沼井クンと目を合わせないように、下を向いてそう言った。
「だったら…俺がタバコ止める」
沼井クンはポケットからタバコの箱とライターを取り出すと、給水塔の下に投げ捨てた。
「どうせキスすんなら…二人とも美味しくした方がいいだろ」
「沼井クン…」
「えっと…俺、その……いや、と初めて会った時、寝顔が可愛いなーって、始業ベル鳴るまでずっと見てた。
ココでタバコ吸うの、口実だったんだ。俺、に会いたくてココに来てた」
沼井クンの言葉を聞いて、私は嬉しくて堪らず沼井クンに抱きついてしまった。
「!?」
「私も…ココで沼井クンに会うのが楽しみだった。沼井クンに会いたくてココに来てたよ」
至福の笑みを浮かべて沼井クンを見上げると、沼井クンもニッコリと満面の笑みを浮かべていた。
そのまま私達は、始業ベルが鳴るまでずっと抱き合っていた。
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何か充が全然不良っぽくないなぁ(汗)
タバコのマナーを語る不良ってどうよ!?
体に害とか言ってるんだったら吸わなきゃいいじゃん、って突っ込みはいらないです(苦笑)
自分では「丈夫な赤ちゃん〜」のセリフは充がいいそうだな〜、って思ったのですが、どうでしょうか?
充って女性がタバコ吸ったりするのを嫌いそうなイメージもあったので。
竜平ドリの方でも書いたんですが、当初充のネタと竜平のネタは逆だったんですよ。
でも、充ドリのネタの方が考えている内に竜平に合う話になってしまったので変えたのです。
主人公ちゃんの寝顔を「か、可愛いな…」と、ドキドキしながら見つめてる充を想像して、
一人で激しく萌えてしまったのはここだけの秘密(笑)