Seasoning



晴天の空の下を走るバスに揺られながら、充はぼんやりと窓の外を眺めていた。
「充〜、何一人で黄昏てんだよ!」
バスに乗ってから一言も話さない充に耐え切れなくなったのか、隣に座っていた竜平は充に身を寄せ頬を突く。
「だって…ボス、今日の遠足楽しみにしてたみたいなのに、来れなくなって可哀相だなーって思って…」
「元々はボスが参加するって言い出したから、俺達も参加する事にしたんだもんね。でも、家の用事じゃ仕方ないよ」
竜平の隣で、持って来たポテトチップをこっそり口に運んでいた博が会話に入ってくる。
一週間前、秋の遠足に関するプリントが配られ、郊外の畑にイモ掘りに行くと知って充達は最初サボるつもりでいたのだが、イモ掘りの経験がない桐山の「イモ掘りをしてみるのも悪くない」という一言で、ファミリー全員で参加する事にしたのだ。
しかし、当日の朝になって桐山から充の携帯に家の用事で不参加するという連絡が入った。
「本当はイモ掘りというものを経験してみたかったんだが…父さんがどうしても外せない用事だから休めと言うんだ。すまないが、充達だけで楽しんで来てくれ」
電話口の桐山の、どことなく淋しそうな声が今でも耳に残っている。

病気ならともかく、折角の遠足なのに親が自分の都合で子供を無理矢理休ませるなんて。
一番楽しみにしていたのはボスなのに…

家の都合で桐山が度々学校を休むのは前からの事だったが、どうにもやりきれなくて自分に絡んでくる竜平の手を振り解き、再び窓の外を眺めた。
「あーあ、ボスが来なかったから充がご機嫌ナナメだよ…こんな事なら俺もサボれば良かったなー」
充がヘコんでいるのは桐山が来なかったからだと勘違いした竜平は、これ以上絡んでも怒らせるだけだと察して充から離れた。
「もう、竜平クンったらそんな事言わないの。たまにはこういうのもいいじゃない。それに、掘ったおイモは全部貰えるんでしょ? 掘りたてのおイモって美味しいのよ〜。繊維質たっぷりだから、美容にもいいしねv」
今まで鏡とにらめっこしながら髪型を整えていたヅキが、鞄に櫛と鏡を仕舞いながら竜平を嗜める。
「ウチは弟と妹が、俺がイモ持って帰るの楽しみにしてるんだよねー。それに、遠足でもちゃんと出席日数に含まれてるから参加しといた方がいいんじゃないの? 竜平、よくサボるし」
「そうだけど…イモ掘りなんてかったりーよ」
博にまで追い討ちをかけられ、竜平はふて腐れながら博の持っていたポテトチップの袋に手を突っ込んだ。
その後、竜平・博・ヅキの三人は楽しく談笑していたが、充は目的地に着くまでずっと桐山の事を考えながら窓の外を眺めていたのだった。

目的地に着くと生徒はバスを降りてすぐに畑まで移動させられ、畑の持ち主のおじいさんの長い話の後(作物に関する話だったが、ファミリーを始め真面目に聞いている生徒はほとんどいなかった)、イモ掘りをする際の注意を聞いてから作業開始となった。
畑には白い線が何本も引かれていて、一人が掘る範囲が決められている。
決められた範囲を掘ると、一人当たり8〜10個のイモが取れるようになっているのだ。
作業が始まり、友達と仲良く話しながら土を掘る者、黙々と作業を進める者、土の中からミミズが出てきて悲鳴をあげる女子など様々だったが、充は周りを気にせず黙々と土を掘り続けていた。
「沼井君」
声をかけられ顔を上げると、担任の林田がニコニコしながらこちらを見ていた。
充は返事をせず、少し睨む様な目つきで林田を見つめる。
「沼井君の隣の空いてるスペース、桐山君の分なんだよ。もし自分の分を掘り終わって余裕があったら、桐山君の分も掘って帰りにおイモ持って行ってあげてくれないかな」
「えっ…いいんすか? ボスの分、持って帰って」
桐山の分のイモが貰えると聞いて、充の表情が少し緩む。
「うん。桐山君は参加予定だったから桐山君の分も用意して貰ってたんだけど、手をつけないのも申し訳ないからね。桐山君がいらないなら、いる人で分けて貰っても構わないから。それじゃ頑張ってね」
そう言って林田はその場から立ち去り、他の生徒にも声をかけ始めた。
林田の一言を聞いて、土を掘る充の手が速くなる。
「いきなりイモ持って来られても、ボス困るだろうなー」
隣でダルそうに土を掘っていた竜平が独り言のように呟く。
「困るかどうかなんて…渡してみなきゃ分からないよ」
遠足には参加出来なかったけれど、せめて掘りたてのイモを持って行ってあげたくて、手を動かしたまま返事をする。
「そうだな。きっとボスの事だから『掘りたてのイモを食べてみるのも悪くない』なんて言うかもしれないな…
俺もさっさと自分の分終わらすか」
最後だけ小声でぼそっと呟くと、竜平も土を掘るスピードを速めた。
「二人とも抜け駆けはダメだよ。俺だってちゃんと手伝うからね」
「そうよ。みんな桐山クンに掘りたてのおイモを食べさせてあげたいって思ってるんだからね」
博とヅキの方を見ると、手を動かしたまま二人共にっこりと笑っていた。
「よし、それじゃ自分の分は早めに終わらせて、みんなで少しずつボスの分を掘ろうぜ!」
「おう!」×3
充の一言を合図に、各自作業を再開した。
しばらくして4人共自分の分を掘り終わり、桐山の分を4人で交代しながら少しずつ掘っていく。
充が蔓を引っ張り土の中からイモを取り出したところで終了の合図が聞こえた。
何とか桐山の分を掘り終える事が出来、充が手にしたイモを見つめながら全員で微笑みあった。

イモ掘りの後は昼食の時間で、各自持ってきた弁当を適当な場所を見つけて食べている。
充達は涼しそうな木陰に移動して、それぞれのお弁当のおかずを取替えっこしながら楽しい昼食の時間を過ごした。
体を動かした後でお腹が空いていたというのもあるが、郊外の木陰で皆で食べる弁当は何時にも増して美味しかった。
充はふと桐山の事を思い出し、ファミリー全員一緒だったら桐山も皆ももっと美味しく楽しく弁当が食べられたかもしれない、と考えて少し淋しくなった。
しかし、楽しそうに笑う三人の顔を見て、一人だけ沈んでいるのも申し訳ないと思い出来るだけ桐山の事を考えないようにして他の皆との会話を楽しんだ。

昼食の時間が終わった後は帰りの時間まで自由行動だったので、女子は草むらを散歩したり花を摘んだりして楽しんでいた。
男子は持ってきたボールでキャッチボールをする者や、ダンボールを借りて土手を滑り降りたりして遊んでいる者がいたが、充達は他の男子のようにはしゃぐ気にはなれず、4人で草むらで寝転がって昼寝をする事にした。
鼻を擽る草の匂いと頬を撫でる風が心地良い。
「河原の草むらで寝るより、何だか気持ちいいねー」
少し眠たそうな声で博が呟く。
「ここの草は河原のと違って服に付きにくいから、安心して横になれるしねv」
いつも身だしなみを気にしてこういう事に付き合わないヅキが、珍しく皆に付き合って草の上に身を横たえている。
「たまにはこうやってのんびりするのもいいよなー」
新鮮な空気を腹いっぱい吸い込みながら、竜平はうん、と体を伸ばした。
「これでボスがいたら最高だったんだけどな…ボスにも草むらで寝転ぶこの気持ち良さ、味合わせてあげたかったのに…」
皆の前で桐山の事を口にしないように気を付けていたのだが、ポロッと本音を漏らしてしまう。
充が淋しそうに呟くのを聞いて、隣に寝ていた竜平が充の頭を軽く叩いた。
「何すんだよ!」
「だって充ってばボスの事ばっかなんだもんよ。ここでブツブツ言ってたってボスが来れる訳じゃないんだし、しょうがないだろ」
「そうよ。それに、一番嫌な思いしたのは遠足に来れなかった桐山クンなのよ。沼井クンが桐山クンが来ない事をいつまでも不満そうにしてたら、桐山クン、遠足に行けなかった事をますます気にしちゃうかも」
「今日ボスが来れなかった分、今度皆でどこか出かければいいじゃん。俺は皆でまたイモ掘り行くのもいいかなー、なんて思ってるよ」
「みんなゴメン…何か俺、一人でいろいろ考えちゃってたな。一番辛いのはボスだよな。楽しみにしてたみたいだし。今日遠足に来れなかった分、今度皆でボスをどこかに連れて行ってあげような」
皆の言葉を聞いて、充は桐山の気持ちや他の三人の事を考えず自分の不満ばかり言っていた事を恥ずかしく思った。
同時に、皆が自分の思っていた以上に桐山の事を考えてくれていると知って少し嬉しかった。
桐山ファミリーの絆の深さを感じながら、充はゆっくりと目を閉じた。

出発時間になり、城岩中学の生徒達はバスに揺られながら帰路に着いた。
城岩中に着くとお約束の「家に着くまでが遠足」という先生のお言葉を聞いて解散となった。
もちろん充達はまっすぐ家に帰ろうとは思っておらず、そのまま桐山の家へと向かった。
「あー…それにしても腹減ったなー…」
城岩中から少し離れたところで博がお腹を押さえながら呟く。
「俺も腹減ったー。博、何でもっとお菓子持って来なかったんだよ」
「何にも持って来ないで人のお菓子ずっとつまんでたクセに何言ってんだよ竜平!」
「もう、二人共ケンカしないの。お腹が空くと怒りっぽくなるってホントなのね。でも、アタシも実は小腹空いてるのよね」
竜平と博の仲裁をしていたヅキが困った顔で笑う。
そんな三人のやり取りを見て充は溜め息をついた。
「ボスにイモ渡すのが先だろ。お前等もうちょっと我慢し…」

ぐぅぅ〜〜〜

言葉を遮るように充の腹が大きな音を立てて鳴った。
充はバツの悪そうな顔をして三人から目を逸らす。
桐山に早く会いたい一心で我慢していたのだが、本当は充もお腹が減っていたのだ。
「なー、充。イモなんてすぐ腐るモンじゃねーし、先にマックか何かで腹ごしらえしてから行こーぜ」
竜平は充のシャツの裾を軽く引っ張りながら駄々を捏ねた。
「賛成。俺も今すぐ何か食いたーい」
「ダメダメ! 渡すのはすぐに済むんだから、ボスに会う方が先だ!!」
充はシャツの裾を掴む竜平の手を軽く叩き、博をジロリと睨みつける。
「そ、そんな怒んなくったっていいじゃんかー」
竜平の後ろに隠れながら、博が小声で反論した。
「そうだ! いい事思いついたわ!」
突然ヅキが手を叩いて声を上げたので、三人の視線がそちらへ集まる。
「桐山クンちに行く前に腹ごしらえするなら、アジトの空き地で焼きイモしない? それで、焼きたてのおイモを桐山クンにも一本お裾分けするの。どう?」
ヅキの視線を受けて、充は少し考え込んだ。
「ボス、焼きイモなんて食べた事ないだろうし、みんなで掘ったイモだから焼きイモ屋のより美味しいだろうな…よし、アジトで焼きイモしてからボスんち行こうぜ!」
「やったー! 焼きイモだ!!」
「みんなで焚き火して焼きイモなんて楽しそーだな!」
「そうと決まったらさっさと行くぞ!」
「あん、もう沼井クンたらせっかちなんだから」
充を先頭にして、四人はアジトまで駆け足で向かった。

一方その頃、桐山は自室で酷くご機嫌斜めだった。
義父がどうしても外せない用事だからと言うので遠足を諦めて同行してみたら、実際は自分が同行するまでもない些細な用事で、遠足に行かせない為の義父の嘘だと気付いた時には既にバスの出発時間を過ぎており、どうする事も出来なかった。
バスを追わせないための保険なのか、家に戻った後も義父は桐山に課題を与えてきた。
課題を終えて時計を見ると、遠足のしおりに書かれていた解散予定時間で、桐山はしばらく何とも言えない気分になりながら時計を見つめていた。
「充達、もう遠足から戻って来ている頃かな…」
そう呟いた瞬間、机の傍らに置いていた携帯から着信音が流れる。
義父からの着信音として設定している無機質な機械音ではなく、充からの着信音として設定していた曲(曲名は忘れたが、充が今一番好きだと言っていた曲なのでそれに設定した)だった。
桐山はすぐに携帯を手に取り、電話に出る。
「もしもし? 充?」
『あ、ボス。充だけど、今電話してて大丈夫かな』
「ああ、大丈夫だ。もうこっちに着いたのかい?」
『うん。実はボスの家の近くまで来てるんだ。それでボスに渡したい物があるんだけど、ちょっとだけ出れる?』
「ちょうど課題も終わったところだ。すぐ行く」
『それじゃ、ボスん家の角のトコで待ってるな』
「分かった」
電話を切ると、桐山は急いで家を出て充達の元へ向かった。

「あっ、ボス来たよー!」
小走りで近付いてくる桐山を見つけて博が声を上げる。
目の前まで来て、ファミリー全員揃っている事に少し驚いたのか、桐山は目を見開いて全員の顔を見回した。
「桐山クン、いきなり全員でこんな所まで来ちゃってごめんなさいね」
「いや、構わないよ」
「充だけの方が良かったかなー。でも、俺達全員でボスに渡したいモンがあったからさ」
「充も言っていた。笹川、渡したい物って何だい?」
「あ、ボス…これなんだけど」
充が横から桐山にビニール袋を差し出した。
桐山はそれを受け取り、中を覗く。
ビニール袋の中には、まだ土がついたままの大きめのサツマイモが10本程入っていた。
「センセーにボスの分も掘って持って行ってくれって言われたんだよ。だから、俺達全員で少しずつ掘ったんだ」
「そうか…ありがとう黒長。他の皆もすまないな」
「気にすんなよ。ボスは遠足行けなかったんだから、これくらいどうってことねぇよ。それより充。渡す物、まだあんだろ?」
竜平に目配せされ、充は桐山にアルミホイルの包みを差し出した。
「ボス、熱いから気を付けろよ」
「これは?」
充からアルミホイルの包みを受け取った桐山は、不思議そうな表情でその包みを開けた。
中には新聞紙に包まれた焼きイモが一本入っていた。
「アジトで焼きイモしてきたの。すっごく美味しいわよ〜。良かったら食べてみて」
「ああ」
二つに割ってみると、中身は黄金色でホクホクしていて美味しそうだった。
パク、と一口齧ってみると、口の中にじんわりと甘い味が広がる。
「どう? ボス、美味しい?」
桐山の口には合わないのではないかと不安になった充が尋ねてくる。
「とても美味しいよ」
その一言を聞いて充はホッとしたような表情になる。
焼きイモを食べている間、皆は優しい目で桐山を見つめていた。
自分達が少しずつ掘ったサツマイモを桐山が美味しそうに食べているのが嬉しかったのだろう。
「甘くて温かくてとても美味しかった。皆、どうもありがとう。ご馳走様」
焼きイモを食べ終わり、桐山は一人一人の顔を見ながらお礼を言った。
「ボスの口に合って良かったよ」
アルミホイルを受け取りながら充が嬉しそうに呟く。
「焼きイモ…初めて食べたんだ。皆のお陰でどんなものか知る事が出来た」
「ボス、焼きイモ食べた事なかったんだー」
「確かに、焼きイモとボスって無縁のような気がするよなー」
「こんなに美味しい物を知らなかったなんて、桐山クン今まで損してたわね」
「焼きイモを知らないと損なのかい?」
「そりゃそうでしょ。こんなに美味しいんだから」
「そうか…そういうものか」
「ボスが気に入ったなら、また今度皆で焼きイモしようよ。落ち葉集めて焼きイモ焼くの、結構楽しかったし」
充に言われ、桐山はコクンと頷いた。
「あんまりボスに時間取らせるのもマズいだろーし、そろそろ帰ろうぜ」
「そうだね。ボス、そのサツマイモも良かったら食べてね」
「サツマイモは体にいいんだから、たくさん食べた方がいいわよ」
「それじゃボス、また明日な」
「ああ、また明日。わざわざサツマイモを持って来てくれてありがとう」
こちらを振り返りながら去っていく四人を、桐山は軽く手を振りながら姿が見えなくなるまで見送った。

家に戻った桐山は、そのまま使用人室へと向かった。
「ばあや、いるかい?」
「ああ、和雄様。どうしましたか?」
ドアを開けると、本を読んでいた初老の女性が顔を上げる。
和雄だという事を確認して本を閉じ、立ち上がった。
「これ…」
先程充達から受け取った、サツマイモの入ったビニール袋をばあやに差し出す。
「あら、美味しそうなサツマイモですね。遠足に行かれた沼井様が持って来て下さったんですか?」
「ああ、充や他の皆が少しずつ掘って持って来てくれたんだ」
「それは良かったですね。料理長に渡して早速今夜の夕食にでも使って貰いましょう。和雄様、何か食べたいサツマイモのお料理はありますか?」
「………焼きイモ」
「えっ?」
「焼きイモが食べたい」
「焼きイモ…ですか? 焼きイモは美味しいですし、私も好きですけれど、お夕飯にするにはちょっと…」
「そうなのかい?」
「ええ。焼きイモは食事というよりはおやつですねぇ。それでは、少し残しておいて明日のおやつに焼きイモでもしましょうか?」
「そうしてくれ。焼きイモ、庭で落ち葉を集めて作るんだろう? 俺もやりたい」
「スミマセン、和雄様。確かに焚き火で焼いた焼きイモはとても美味しいですが、お庭で焚き火をしたらご主人様に叱られてしまいます。
オーブンで焼く事になってしまいますけど…」
「…そうか。それならばあやに任せるよ」
「はい、それでは明日のおやつは焼きイモにしますね。夕食の方は料理長におまかせしましょう」
「ああ、頼む…」
義父の所為で庭で焚き火が出来ないと知って、何となくもやもやとした気分になりながら桐山は使用人室を後にした。

その日の夕食のメニューは、サツマイモのポタージュスープ、えびとサツマイモのサラダ、サツマイモのチーズ煮、デザートはスイートポテトと、まさにサツマイモづくしだった。
義父は仕事で今日は帰宅しない事になり、一人きりの広い食堂で料理長が腕を振るったサツマイモ料理を口に運ぶ。
味は申し分なかった。
しかし、充達がくれた焼きイモを食べた時に感じた暖かい物が感じられない。
ゆっくり味わうように食べてみたが、全て食べ終えてもその暖かさを感じる事は出来なかった。
同じサツマイモなのに何でこんなにも違うのかを知りたくて、桐山は夜中にこっそり明日のおやつの為に残しておいたサツマイモを厨房から取って家を抜け出し、アジトに向かった。
充達がした焚き火の跡を見つけ、すぐその横に落ち葉を集める。
夕食が終わった後、ばあやからそれとなく聞きだした通りに水で濡らした新聞紙でサツマイモを包み、更にそれをアルミホイルで包んで落ち葉の下に入れた。
マッチで火をつけ、サツマイモが焼けるのをじっと待つ。
しばらく待って焚き火の中からアルミホイルの包みを取り出して開いてみると、サツマイモはいい具合に焼けていた。
二つに割って黄金色の身を齧る。
「………違う」
同じ場所、同じ方法で作ったはずなのに、この焼きイモからも充達がくれた焼きイモのような暖かみは感じられなかった。
「どうして違う物のように感じられるんだろう…明日、充達に聞いたら教えてくれるかな」
みんなで桐山の為に少しずつ土を掘って、桐山に出来たての美味しい焼きイモを食べてもらいたい、と気持ちを込めた事が最高の調味料になっていると理解出来なかった桐山は、焼きイモを片手に充達の事を考えながらぼんやりと夜空を眺めていた。

+ + + + + +

久々に健全SSを書いてみました。しかも沼桐沼健全版ではなく、桐山ファミリー友情話ですよ!
ある時急にこの話を思いついて、どうしても書いてみたくなったので…
私は桐山は充だけでなく、他のファミリーの皆の事も心の奥底では大事に思っていて、充はもちろん、竜平・博・ヅキも桐山の事をボスである前に一人の友人だと思っている、と考えているので、その桐山ファミリーの絆の深さを表現したかったんです。
だからってイモ掘りはないだろ、って突っ込まれそうですが(苦笑)
自分が中学の時、イモ掘り遠足なんてなかったんですよねー。小学校の時だけだった気がする。
イモ掘りシーンは自分が行った時の事を思い出しながら書いたんですが(実際は一人辺り8〜10本も貰えません。5〜6本くらいでした)、
念の為ネットでイモ掘りがどんな感じか調べたら、見事に幼稚園・小学校しか引っ掛からなかったよ…中学はなかったです。
でも、何故か「学校のイモ掘り遠足に行く桐山ファミリー」のネタを思いついたので…
桐山の夕食は、桐山家の夕食で出ても違和感ないようなサツマイモ料理をネットで検索して調べました。
ちょっと栄養的に偏ってるっぽいけど、そこら辺はスルーして下さい(苦笑)
サツマイモのチーズ煮が美味しそうだった…
ちなみに今回の話で出てきたばあやさんは、裏のバレンタイン沼桐SSに出てきたばあやさんと同じ人です。
私の脳内設定では、桐山家には桐山の唯一の味方であるばあやさんがいる事になってるんですよー。
今回のお話で、桐山と他のファミリーの皆がお互いに相手を大事に思っている事が、読者様に上手く伝わるといいな…



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