Eat Me


バレンタインデー前日。
何となく授業を受ける気になれなかった充は、一人サボッて屋上に来ていた。
隅の方に腰を下ろし、背後のフェンスに体を預ける。
そのまま空を見上げたが、充の視線はもっと遠くの何かを見つめているようで、心ここにあらずといった様子だった。
「うーん…今年のバレンタインはどうしようかな。去年はあげたのに今年はあげない、なんて訳にはいかないし、ボスは今年も当然貰えると思って期待してるだろうし…」
充は、今年のバレンタインをどうしようか悩んでいたのだ。
「去年はホットチョコレート作って何とかバレンタイン用のチョコ買わずに済んだけど、今年も同じじゃボスは満足しないだろうなー。だからって、やっぱりバレンタイン用のチョコ買いに行くのは嫌だ…」
そう呟いて、大きな溜め息をつく。
「何しょぼくれた顔してんだよ。らしくねーな」
「!?」
聞き覚えのある声を耳にしてそちらに顔を向けると、いつの間にか竜平が隣に立っていた。
「お前、授業は?」
「俺もサボりーv 博は居眠りしてたから、起こすの可哀相で声かけなかったんだよ。三村も居眠りしてて、ヅキがウットリした顔でそれ見てたから置いてきた」
「あの先生の授業はかなりクルからなー」
「眠りの呪文でも唱えてんのかって問い詰めたくなるよな」
竜平の言葉に、充は思わず吹き出してしまう。
「お、元気出てきたみたいじゃん。今日はボスが休んでるから、また拗ねてんのかと思った」
「そんなんじゃねーよ」

それもちょっとあるけど、ホントの理由は竜平には言えないな…

何と言っていいか分からず、充は学ランの内ポケットからタバコを取り出して誤魔化す事にした。
「明日はバレンタインなんだからさ、シャキッとしてねーとチョコ貰えないぜ?」
充がタバコを取り出したのを見て、自分もポケットからタバコとライターを取り出し、ライターに火をつけてそれを充の目の前にスッと差し出した。

そのバレンタインが原因で悩んでんだよ。

心の中でツッコミつつ、迂闊な事を言わないように無言でタバコを咥えると、竜平から火を借りた。
竜平も自分のタバコに火をつけて、ライターをポケットにしまう。
「竜平こそ、甘いモン嫌いなクセにバレンタインを楽しみにしてるみたいだな」
「甘いモン嫌いだけどさ、やっぱ貰えれば嬉しいじゃん? 俺ってモテモテーって感じでさ」
「彼女いるクセに、モテてどーすんだよ」
竜平の軟派な性格が理解出来ず、思わず眉を顰めてしまう。
「彼女がいても、チョコ貰えれば嬉しいモンなんだよ。それに、今年は彼女がどんな事してくれんのかも楽しみだしな」
そう言って、竜平は何かを思い出しているようで、厭らしい笑みを浮かべていた。
「どんな事って…エッチぃ事?」
去年桐山に裸エプロンの姿で抱かれた事を思い出し、頬を赤らめながら竜平に尋ねた。
「そう! 彼女は俺が甘いモン嫌いだって知ってるから、ちゃんとしたチョコあげない代わりにって、チョコポッキーを1本ずつ胸に挟んで食べさせてくれたんだよ!!」
照れ隠しなのか、竜平は熱く語りながら充の背中をバシバシ叩いた。
「何て言うか…竜平の好きそうなプレイだな」
「だろ? 彼女だけあって俺の好み分かってるよな! そうやって何本か食べさせてくれた後は『チョコの次は私を食べてv』なんて言うんだよ。もう、堪んないねー」
下品に笑いながら、更にバシバシと背中を叩く竜平。
「私を…食べて?」
背中を叩かれ続け最初は不快そうな顔をしていたが、竜平の一言に何か感じるものがあった充は、いきなり考え込むようにして黙ってしまった。
「ん? どしたの、充ちゃん。想像してコーフンしちゃったか?」
竜平がニヤニヤ笑いながら充の顔を覗き込もうとすると、充は突然ガバッと立ち上がった。
「な、何?」
「そうだよ! その手があったよ!! 胸で挟むのは無理だけど、食べさせてあげるってのはいい考えだよな。その後の事も…」
突然立ち上がったと思ったらブツブツと独り言を言い始める充に、竜平は呆気に取られていた。
ポカーンとした顔で充を見つめていると、満面の笑みをこちらに向けてくる。
「竜平のお陰で今年も何とかなりそうだよ。助かったぜ。ありがとな」
今度は充が竜平の背中をバシバシ叩きながら言った。
「だから…何? 話見えないんだけど」
「どうするか決まったからには、もっと詳しい計画練らなくちゃ。ワリィ、竜平。俺帰る。また明日な」
竜平の言葉は耳に入っていないのか、充は喋るだけ喋ってそのまま屋上から立ち去ってしまった。
「何なんだ、一体…てか、あいつ何するつもりなんだ? 彼女はいなかったハズだし…」
一人取り残された竜平は、充が出て行ったドアを見つめながら首を捻るばかりだった。

バレンタイン当日。
昨日休んでいた桐山も、今日はちゃんと学校に来ていた。
充からのチョコを期待しているのだろうか。
放課後を待って「渡したい物があるから」と桐山を家に誘い、二人で帰路に着いた。
家に入ると、部屋には行かずそのまま台所に直行する。
「ボス、そこの椅子に座っててよ。あ、そうだ。何か飲む?」
「いや、いい」
いつもなら、充にそう聞かれると「飲む」と返事をしてコーヒーなどを出して貰っている桐山だが、今日はそれを断った。
飲み物よりも先に欲しい物があるのだろう。
「そっか…じゃ、ちょっと待ってて。渡したい物ってバレンタインチョコなんだ。今用意するから」
「そうか…」
返事は素っ気なかったが、桐山の表情がどことなく嬉しそうなものになる。
充は冷蔵庫から買っておいたチョコポッキーの箱を取り出し、これから自分がやるべき事を軽く頭の中でおさらいしようとして、急に緊張してきてしまった。
冷蔵庫のドアを開けっ放しにしたまま、真っ赤な顔をして両手でポッキーの箱を握り締めている充を見て、桐山が小首を傾げる。
「冷蔵庫、閉めないとまずいんじゃないかな?」
一向に動こうとしない充に、痺れを切らしたらしい桐山が声をかける。
「あ、そ…そうだね。ごめん」
声をかけられた事でハッと我に返り、充は慌てて冷蔵庫のドアを閉めて桐山の元へと戻った。
「充、それが今年のバレンタインチョコかい?」
去年はホットチョコレートとはいえ、充が手作りした物を貰えたのに、今年は何の変哲もない市販のチョコポッキーを渡されると思ったのか、桐山の表情が不満気なものに変わった。
「そうだけど、これだけじゃないんだ」
桐山の表情の変化に気付き、充が慌ててフォローする。
「他には何があるのかな?」
「えっと…それは…とりあえず、このチョコ食べさせてあげるな!」
これからの自分の行動に桐山が満足してくれるか自信がなかったが、決めた以上はやるしかない。
充は急いで箱を開けると、中からポッキーを1本取り出し、チョコのついていない方を口に咥えた。
それを見ていた桐山は、充が何をしようとしているか全く理解出来ず、また小首を傾げた。
充は恥ずかしそうにチラ、と桐山を見つめると、チョコでコーティングされた先端を桐山の口元に突き出した。
「これを食べろ、という事かい?」
桐山に問われ、充はコクンと頷く。
「そうか、分かった」
桐山は納得したように軽く頷くと、薄い唇を少し開いてポッキーの先端を咥えた。
手本を示すように充がポッキーを少しずつ食べ進めていくと、桐山もそれに倣って食べ進めてくる。
顔が近付いて来るにつれ、充の心臓は破裂しそうな程に高鳴り始める。
羞恥に耐え切れず、唇と唇が触れ合う少し手前で自分からポッキーを折ってしまった。
桐山から視線を逸らしたまま、気まずそうに自分の方に残ったポッキーを咀嚼する。
「充、もう一本くれないかな」
途中で折られたのは残念だったが、充が緊張と羞恥でいっぱいいっぱいになっているのを察した桐山は、出来るだけ優しく充に声をかけた。
「うん…」
新しいポッキーを咥え、先程のように先端を桐山の前に差し出す。

今度は恥ずかしくても我慢しなきゃ。

途中で折ってしまっては意味がないし、何より桐山に対して失礼なので、今度はギュッと目を閉じて食べ進めたが、唇が触れた瞬間また自分から顔を離してしまった。
いつもこういう雰囲気になった時は、充がどんなに恥ずかしがっても桐山が強引に攻めてくるので事は順調に進むのだが、自分からするとなるとどうも緊張してしまうし、何より恥ずかしくて堪らない。
「充、今日は何だか様子がおかしいな。酷く緊張している」
まるで初めて一つになろうとしている時のように戸惑い、恥らっている充の頭を、桐山は優しく撫でてあげた。
「ごめん…でも、嫌だからこんな態度取ってるんじゃないんだよ? それは信じて、ボス」
「そうか…では、もう一本貰おうか」
潤んだ瞳で訴えかけてくる充に、桐山は少しも怒る事なくもう一度ポッキーを強請った。
「あ、うん。ちょっと待ってね」
新しいポッキーを取り出そうとして、箱の中を漁る。
「ところで、その中身は全部充が食べさせてくれるのかな?」
ポッキーを咥えようとしていた充に、桐山が突然問いかけた。
「えっ…ボスがそうして欲しいならそうするけど、この調子じゃ今日中に食べ終わらないな」
「食べ終わらなかったら、また日を改めて食べさせてくれればいい」
「………うん」

こんな恥ずかしい事、出来ればバレンタインの今日だけでカンベンして欲しいんだけど。

そう思いながら充はポッキーを咥え、桐山に差し出した。
先程と同じように桐山がポッキーの片端を咥えてくる。
大分落ち着いてきたので今度こそ大丈夫だと思った充だったが、桐山の整った美しい顔が間近に迫ってくると、一気に心拍数が上がって引き気味になってしまう。
それでも唇が触れ合うまでは何とか我慢出来たが、またすぐに顔を離してしまった。
そんな充を、桐山は逃さなかった。
充の後頭部に両手を回して自分の方へと引き寄せると、うんと深く口付ける。
充が躊躇いながらも唇を開くと、待ち構えていたかのように桐山の舌が侵入してくる。
それと同時に、口内にチョコレートの甘い味が広がった。
今までのキスが軽かった分、桐山は貪るように充の口内を舌で掻き回す。
二人の唇の間から、ぴちゅ、くちゃっと粘着質な音が漏れ聞こえてくる。
歯の裏をなぞられたり、舌を強く吸われたりと、充は桐山にされるがままになっていた。
口内のチョコレートの味がすっかりなくなってしまう程たっぷりと唾液の交換をした桐山は、そっと充の唇を解放した。
「ハッ…ハァッ…」
何度か口から新鮮な空気を吸い込みながら桐山を見ると、満足気な顔つきで唇の端をペロ、と舐めていた。
その妖艶な様にゾクリとしてしまう。
「充、落ち着いてからで構わないから、もう一本…」
「あ、いや…その…チョコの他にもあるんだ」
この調子でチョコを食べ続けていると、一番の目的が果たせなくなると思った充は慌てて桐山の言葉を遮った。
「ああ、さっきそう言っていたな。何があるんだい?」
「それは…えと…」

言わなきゃ…
ここでいつもみたいにボスに迫られたら、今までの恥ずかしい行動が無意味になっちまう。
頑張れ、俺!


心の中で自分を励ましてみたが、想像の中ではすんなり言えた事も、桐山本人を目の前にしてみると予想以上に恥ずかしく、どうしても口籠もってしまう。
「もう一つのあげたい物、今用意するから!」
充は意を決して言うと桐山から離れ、おもむろにシャツのボタンを外し始める。
充の行動に疑問を感じつつも、桐山は黙ってそれを見つめていた。
シャツのボタンを全て外した後はズボンに手をかける。
ベルトを外し、ズボンを脱いでその辺に放り投げると、桐山の方を向いた。
「お、俺の事も食べて!」
そう叫んだ後、恥ずかしさで体中が熱くなるのを感じた。

言っちゃった…
このセリフ、実際に言ってみるとめちゃくちゃ恥ずかしいよぉ…


思わず下を向いてしまった充だが、桐山の反応が気になり恐る恐る顔を上げると、桐山は何か一点をじっと見つめていた。
視線を辿ってみると、桐山が見つめているのはボクサーパンツに包まれた、雄根の形がくっきりと浮かび上がっている自分の股間だった。
しかも、雄根の先端が触れている部分は薄らと濡れシミが出来ている。
充は慌てて股間を両手で隠してしまった。
「何故隠すんだ?」
「だって…まだキスしかしてないのにこんなになっちゃってて、恥ずかしい…」
「でも、それでは何も出来ない」
「そ、そうだね…」
仕方なく充は股間から手を離し、その膨張した部分を桐山の前に晒した。
「脱がないのか?」
「え?」
「食べさせてくれるんだろう?」
「それって…自分で脱いで、今回は俺がリードしろって事?」
充の問いに、桐山がコクンと頷く。
ここまですれば、堪えきれなくなった桐山がいつものように食いついてくるかと思っていたので、自分からするよう言われるのは計算外だった。
桐山はじっと自分を見つめているだけで何もしてこない。
充は観念して下着に手をかけ、ゆっくりとそれを下ろしていった。
今まで服は桐山が脱がせてくれていたので、桐山の目の前で自ら脱ぐ、という行為が途轍もなく恥ずかしく感じられた。
下着に押さえつけられていた雄根が解放され、濡れた先端が外気に触れてヒヤリとする。
下着を脱いだ途端、桐山の視線が雄根に絡み付いてきて、充は体を震わせた。
まるで視線で犯されているようで、見られているだけなのに充の息遣いは荒くなり、先端からは新たな先走りがじわり、と滲み出てきた。
「それでは食べさせて貰おうか」
充は軽く頷くと、椅子に腰を下ろしたままの桐山の傍に行き、両手で顔を包み込むようにしてそっと口付けた。
興奮している所為か、先程のような恥ずかしさはもうなかった。
「充」
「な、何?」
もう一度口付けようとして桐山に声をかけられ、何かマズい事をしたのかと焦る充。
「立ったままだとやり辛いだろう。ここに座るといい」
「わっ!?」
桐山は充を抱き寄せると、自分の膝の上に横向きになるように座らせた。
顔の高さが同じくらいの位置になる。
桐山の首に両手を回すと、充は再び口付けた。
何度か触れるだけのキスを交わした後、桐山は充を導くように唇を少し開いた。
充がそこからオズオズと自分の舌を差し込んでくる。
拙いながらも、舌と舌を擦り合わせたり、桐山の舌をちゅっ、んちゅ、と強めに吸ったりして積極的に舌を動かしてくる。
しかし、桐山は充の好きなようにさせているだけで、何もしてこようとしなかった。
体に触れてくる事すらしなかった。
いくら自分がリードするといっても、抱き締めて張り詰めた雄根に触れるくらいはして欲しい。
愛撫して貰えず、先端から透明な涙を流す雄根がジンジンと疼く。
下半身の疼きを堪えつつ、今度は白く美しい首筋に口付ける。
口付けながら桐山のシャツのボタンを全て外して前を開くと、首筋から鎖骨にかけて唇を肌に触れさせたまま移動した。
微かだが、桐山の口から濡れたような声が聞こえてくる。
黒のタンクトップの上から適度に筋肉がついた胸を撫で回すと、桐山の息遣いが少し荒くなったような気がした。
それでも桐山はまだ自分に触れてこない。
「ねぇ…ボス。ボスも触ってよ」
耐え切れなくなった充は、愛撫の手を止め桐山に訴えた。
「食べさせてくれるんじゃないのか?」
「そうだけど…」
「なら、どうして欲しいのか充が行動で示してくれ」
「…分かったよ」
充は桐山の手を取ると、一番触れて欲しい部分へと導いた。
「ここ、触って…」
「もう触れている」
「もっとちゃんと触って。ボスの手で扱いて…お願い」
涙目になりながらおねだりする充を見ていると、これ以上焦らすのは可哀想に思え、桐山は頷き手の中の熱い塊をゆっくり上下に扱き始めた。
「あっ…ぁんっ…」
少し扱いただけで充はビクビクと体を震わせて過剰に反応する。
先端から溢れ出た先走りが、あっという間に雄根全体と桐山の手の平をネトネトに濡らしていった。
「ずいぶん濡れているな」
「だ、だって…ずっと触って…ぅんっ…欲しかったから…ぁ…」
充は桐山の首に抱き付き、息も切れ切れに言った。
「そうか…では、こっちもかな?」
桐山は空いている手を充のおしりの方に回し、指を這わせて蕾を探り始めた。
「ヤダッ…そっちは違っ…」
「違わないだろう? いつもここに触れているのだから」
指先に充の蕾を感じ取ると、その周辺を円を描くようにそっとなぞる。
「ふぁ…んっ…ハァ…」
充は荒く息を吐きながら桐山の胸に顔を埋めた。
周辺をなぞっていた桐山の細い指が、にゅるっと中に侵入してくる。
散々焦らされた上に雄根と蕾を同時に攻められ、充は桐山に愛撫する事もすっかり忘れて喘いでいた。
不規則に桐山の指が動く度に腰を動かしてしまう。
雄根も扱いて貰っているのに、今の充は蕾の奥から与えられる快感しか頭になかった。
それだけ桐山に女役として慣らされてしまったのだろう。
中で指を鉤型にして抉るように動かすと、膝の上で充の体が何度も大きく跳ねた。
「や…あぅ…ダメェ…」
充は桐山のシャツをギュッと握ると、何かが昇り詰めてくるような感覚を必死で堪えた。
「充、我慢しなくていい。出してもいいよ」
「でも…こんなすぐ…ひっ!? くっ…ぅん…あぁぁーっ!!」
行為を始める前から充が高まっていたのと、中の一番いい部分を指でぐりぐりと弄られ、充は呆気なく達してしまった。
濃厚なエキスが桐山の手の中に注がれる。
「イッちゃった…始めたばっかなのに…」
プルプル震えながら申し訳なさそうに言う充の額に、桐山は『気にするな』と言わんばかりにちゅ、と口付けた。
手を広げてみると、思っていたよりも大量の牡液が付着している。
桐山は躊躇う事なく、それを舌で舐め取った。
「あ、ボス。舐めなくてもいいよ。ティッシュあるから!」
充が手を伸ばしてティッシュを何枚か掴み桐山に差し出すが、それは受け取らずに最後の一滴までキレイに舐め取った。
桐山が汚れた手の平を舐めている間、充は取ったティッシュで先走りと牡液でベトベトになってしまった雄根をキレイにする。
「すぐイッちゃったし、一人で興奮して俺ばっかエロいみたいだ…」
後始末をしたティッシュを丸めてゴミ箱に放り込むと、充は少し低い声でポツリと呟いた。
「興奮してると『エロい』のかい?」
「うん…だって、ボスは凄く冷静なのに、俺一人でこんな感じちゃって…」
「冷静なんかじゃないよ。俺も充の言うように『エロい』んだと思う」
そう言って桐山は充の手を取り、自分の股間に押し付けた。
今まで太股の上に腰掛けていたから気付かなかったが、桐山の雄根もまた熱く大きく膨らんでいる。
「充の家に来てから、ずっとこうだ」
「それじゃ、ボスも俺と同じだな」
充が少し安心したように笑うと、桐山は今度は頬に軽く口付けてくる。
「ボス…どうなってるか確かめてもいい?」
「ああ、構わない」
充は膝の上から降りると桐山の足元に座り込み、ズボンの上から膨らんでいる股間を撫でた。
僅かだが、桐山がピク、と反応を示す。
ベルトを外してファスナーを下ろすと、充はズボンに手をかけた。
「ボス、ちょっと腰浮かせて」
桐山が言われた通り少し腰を浮かせている間に、下着ごと一気にズボンを脱がせてしまう。
そして脱がせたズボンと下着が皺にならないように空いている椅子の背にかけた。
桐山の方を見ると、深く椅子に腰を下ろして充に見せつけるように足を大きく開いていた。
中心部には、剛直と呼ぶに相応しい、太く逞しい雄根が天を仰いでいる。
「スゲェ…」
充は桐山の雄根に熱い視線を向け、溜め息混じりに呟いた。
再び足元にしゃがみ込み、桐山の股間に顔を近付ける。
間近で見ると一層迫力があった。
「ボス、お口でしてあげるね」
そう言って根元をそっと両手で握ると、先端の裏側を軽く一舐めした。
少ししょっぱい味がしたが、気にせず雄根全体をペロペロと舐めていく。
桐山の味や匂いを感じる事によって、桐山も自分と同じ普通の男なのだと実感出来るので、まだ上手に出来ないけれどフェラチオしてあげるのは好きだった。
根元まで下降していき、今度はパンパンに張り詰めた褐色の袋に唇で触れる。
ちゅっ、ちゅっと軽く吸ってから、袋を手の平でそっと持ち上げ、袋の縫い目のような部分とその下の窄まりの間に何度も舌を這わせた。
桐山の体が微かに震える。
そのまま舌を這わせながら、再び先端に向かって上昇していく。
「ボスのタマタマすっごい張ってるよ。もしかして溜まってる?」
袋を手の平で優しく揉みしだき、先端に舌を這わせながら充が尋ねてくる。
先程まであんなに恥ずかしがっていたのに、桐山の雄根をしゃぶっている内に興奮したのか、言動がだんだん大胆になってきている。
「分からない…自分では処理していないから、その所為かもしれない」
「それじゃ、ここに詰まってるセーエキ、俺が全部受け止めてあげるね。だから口ん中とか、おしり…とか、いっぱい出していいからな。今日バレンタインだし、俺頑張るから」
袋を揉んだまま、もう片方の手でサオをゆっくりと扱き、先端の裏側部分を舌先でチロチロと擽る。
自分も男だから、男のイイ部分は分かっている。
時々括れに沿ってつぅっと舌を這わせたり、開きかけている先端の切れ込みを舌先で強めに弄ったりすると、桐山は眉を寄せ、時々聞こえるか聞こえないかの小さな声を漏らした。
「そろそろ出したい?」
充が雄根に舌を這わせながら桐山を見上げて尋ねると、桐山は頬を薄らと染めてコク、と頷いた。
「今咥えるから、遠慮なく出してね」
充は一度桐山の雄根から口を離すと、咥え易いように膝立ちになって右手を根元にそっと添えた。
先端だけをはむ、と優しく咥えると、そのまま唇で扱くように根元まで咥え込む。
口の中にたくさん唾液を溜め、桐山の腰を両手で掴むと、充は頭を上下に激しく動かした。
「んっ…あぁ…」
じゅぷ、じゅぽ、ずぷっと卑猥な音を立てながら充が雄根を吸い上げると、さすがの桐山も堪らず声を上げ始めた。
始めはただ上下に頭を動かしているだけだったが、少し余裕が出てきたのか頭を動かしながら口内では雄根に舌を絡めて桐山を追い詰めていく。
「充…も、いい…かな?」
桐山の切なげな声を聞いて、充は頭を動かすのを止めると、先端だけを口に咥えて舌で念入りに愛撫しながら、自分の唾液でヌルヌルになった雄根をシュッ、シュッと手で扱いた。
「みつ…んっ…出すよ…」
口で桐山の濃厚な牡液を受け止める心の準備をして、雄根を扱く手の動きを早める。
「ふ…ぅん…充…くぅっ…んんっ!!」
桐山が充の頭をぐっと押さえつけ、低く呻くと同時に充の口内に生臭い味と匂いが広がった。
「うぐ…んっ…う…」
舌に絡み付く程濃厚な牡液を、充は必死に喉の奥へと押し込んでいく。
「ハァッ…ふぅ…」
口内の牡液を全て飲み込むと、充は雄根から口を離して息を大きく吸い込んだ。
落ち着いてから、牡液と唾液塗れになった桐山の雄根を舌でキレイにしていく。
「はい、キレイになったよ」
「ありがとう、充」
頭を撫でられ、充は本当に嬉しそうに笑った。
そんな充の笑顔を見て、桐山は再び熱が込み上げてくるのを感じる。
「あんなにたくさんセーエキ出したのに、ボスのチ×ポおっきいままだね」
射精したばかりとは思えない程逞しく直立している桐山の雄根を、熱く潤んだ瞳で見つめながらそっと撫でた。
「もう、挿れる?」
「いや、今度は俺が口でする」
「俺は平気だから、無理しなくてもいいよ」
「無理はしていない。挿れるのは、充をもっと味わってからだ」
真顔でそう言われ、嬉しさと恥ずかしさで目を合わせていられなくなる。
「味あわせてくれるかな?」
桐山の問いかけに充は無言で頷くと、立ち上がってはちきれんばかりになっている雄根を桐山の前に差し出した。
桐山は椅子に腰を下ろしたまま身を屈めて充の先端を一舐めしたが、すぐに顔を離してしまう。
「どうしたの? ボス」
「舐め辛いな…充、すまないがテーブルの上に腰を下ろしてくれないか?」
「う、うん…」
充は言われた通りにテーブルの上に腰を下ろした。
「充、足を開いてくれ。それでは見えない」
「こう…かな?」
足をテーブルの上に乗せ、M字型に開いてみせると、桐山は満足そうな表情になり股間に顔を近付けてきた。
つぅっと桐山の舌先が充の先端の切れ込みをなぞる。
そのまま舌を出して先端の裏側だけを集中して攻めてくる。
「ひゃんっ…そこ、イイッ…気持ちいいよぉ…」
舌先が裏筋を擦る度に、充は歓喜の声を上げた。
括れにも丹念に舌を這わせた後、桐山の舌がツツーッと雄根に触れたまま下降する。
褐色の袋に何度か口付けると、舌先でのの字を描くように愛撫し始めた。
「んぅっ…ヤダ、そんなのっ…擽ったいよぉ!」
気持ち良さより擽ったさの方が勝っているのか、充は足を閉じてしまわないように両手でしっかり押さえながらもビクビクと体を震わせていた。
「ダメェ…ホントに擽った…わぁっ!?」
制止の声も聞かず、桐山が執拗に袋を攻めていると、擽ったさに身を捩っていた充がバランスを崩して後方に倒れてしまった。
倒れた拍子に、今まで双丘に埋もれて見え辛くなっていた充の蕾が丸見えになってしまう。
それを見て桐山はゴク、と唾を飲み込むと、充の腰を少し持ち上げ双丘の谷間に顔を埋めた。
「イテテ…え、な、何?」
テーブルに思い切り背を打ちつけたかと思ったら、今度は腰が浮き上がったような感触を覚え、充は慌てて桐山に視線を向けた。
「わわ…ちょっとボス! こんな体勢やだよぉ!!」
開脚後転の途中のようなポーズ(俗に『まんぐり返し』と言われているものだ)を取らされ、桐山が自分の尻に顔を埋めている。
蕾を舐めている様を見せつけられ、何もかも投げ出して逃げてしまいたいと思う程恥ずかしかったが、桐山が充の両足をしっかり押さえつけてそれを許さなかった。
「ボスッ…シャワー浴びてないから、そんなトコ舐めたら汚いよっ…」
「平気だ…それに、この方が充をよく味わえる」
「で、でも…」
この格好が恥ずかしいという気持ちもあったが、桐山の美しい顔が自分の尻に埋もれているのを見ると、何故か罪悪感を感じてしまう。
しかし、そんな気持ちもすぐに桐山の愛撫によって何も考えられない状態にされてしまう。
最初は周辺をなぞるように動いていた桐山の舌が、ぬぷっと蕾の中に差し込まれる。
「あひぃっ…ホントにダメだよぅ…」
口ではダメと言いつつも、ぬちゅ、くちっと厭らしい水音を立てながら桐山の舌が出入りする度に、無意識の内に足を大きく開き、腰を浮かせてもっととせがんでいるようだった。
蕾を攻められ、透明の蜜を垂れ流して悦ぶ己の雄根を、充はぼんやりと見つめていた。
「充、そろそろいいか?」
十分に充の味を堪能した桐山は、顔を上げて尋ねた。
「うん…いいよ。今度はチ×ポで俺の事いっぱい味わってね」
桐山の愛撫で脳みそが蕩けたようにされてしまった充は、恥ずかしげもなく自らの双丘を手で押し広げる。
剥き出しになった、桐山が欲しくて少し開きかけている蕾に、濡れた先端を当てがいゆっくりと腰を押し進めていった。
「あぅ…あっ…ボスの…おっきいのが入ってくるぅ…」
「よく濡らしたから、今日は滑りがいいな」
根元までしっかりと中に押し込めると、桐山は充の両足をV字型に開脚させ、腕で抱えるようにして雄根を出し入れし始めた。
「ふぁぁぁっ…や、何コレッ…ボスのチ×ポが出入りしてるの…分かるよぉ…」
「こういうのがいいのか?」
充の反応を見て、出し入れの速度を少しずつ上げていく。
じゅっ…ぷぴゅっ…と結合部から卑猥な音が立つ度に、充は体を捩じらせて喘いでいた。
「…が…よぉ…」
「?」
もう少し腰の動きを早めようと、充の足を抱え直そうとした桐山は、充が何か自分に向かって訴えている事に気付き、動きを止めて様子を見た。
「ボスが…遠いよぉ…」
両手を自分に向かってぐっと伸ばし、淋しげな表情で訴えかけてくる充。
桐山はそれを見て、胸がきゅっと締め付けられたような気がした。
充の足を離し、ゆっくりと己自身を充の中から引き抜く。
「あ…どうして…抜いちゃヤダ…」
機嫌を損ねてしまったかと慌てる充に、桐山は優しく唇を重ねる。
そして充の体を抱き上げるとそのまま椅子に腰を下ろし、充にも自分と同じ方向を向くようにして膝の上に座らせた。
「大丈夫だ。傍にいる」
桐山は充の耳元で囁くと、驚き戸惑っている充の体を後ろから強く抱き締めた。
「ボス…」
テーブルの、固く冷たい感触が消え、背中には桐山の温もりが感じられる。
それだけで心が温かく満たされていくようだった。
自分を抱き締めている桐山の手に、自分の手をそっと重ねる。
「充、このままもう1度、いいかな?」
「うん。ボスとぴったりくっついたまま、1つになりたいな」
充は少し腰を浮かせ、桐山の先端を蕾に当てがった。
桐山は充の腰を抱き寄せるようにして挿入していく。
「あぁぁっ!」
先程よりも深く桐山を受け入れ、充は声を上げた。
充を抱き締めたまま、桐山が腰をぐりぐりと動かしてくる。
充も桐山の動きに合わせて腰を動かし、二人でどんどんと昇り詰めていく。
「充…」
荒く息を吐きながら充の頬に手を添え、負担にならない程度に自分の方へ向かせると、自分と同じように荒い息を吐き出している口をキスで塞いだ。
舌を絡ませながら、腰の動きを早めていく。
「ボス…ごめ…俺、も…また出ちゃうっ…」
「俺もだ、充…一緒に…」
「一緒…ボスと一緒にイク…」
一度深く口付けてから唇を離すと、桐山は充の体を突き上げるように腰を動かした。
手は、今にも破裂しそうなくらい張り詰めている雄根を扱いて充を絶頂へと追い詰める。
「うっ…ぁんっ…そんなにしたらイッちゃう! 出るよっ…出ちゃうぅ…ボスッ…ひぁぁっ!!」
充が声を張り上げ、思い切り仰け反ると同時に、開きかけていた先端の切れ込みから、ビュクッ、ビュルルッと勢いよく牡液が放出され、床に飛び散っていく。
「く…充…うっ…あ、あぁっ!!」
肉壁に雄根を締め付けられ、堪え切れなくなった桐山は充にしがみ付くようにして肩に顔を埋め、そのまま中で達した。
狭い肉洞がみるみる内に桐山の熱い精で満たされていく。
中に収まりきらなかった牡液は、結合部からドロドロと滴り落ちて椅子の上に白く小さな水溜りを作った。
「ボス…ハッ…あ…」
「充…」
「今日は親帰って来ないし、特別な日だから…まだまだいっぱいお替りしてね…」
充がトロンとした目で桐山を見上げる。
「ああ…もっと食べさせてくれ」
二人は唇を重ねると、ぴったりと寄り添ったまま目を閉じて、しばらくお互いの温もりを感じていた。

「充、ちょっと屋上まで来て貰えるかな」
数日後、桐山にそう言われ、充は桐山と共に屋上に向かった。
扉を開けて中に入り、いつもファミリーでたむろしている、日当たりが良く外部から死角になっている場所に行き腰を下ろす。
「どうしたの、ボス」
「この前貰ったチョコレート、また食べさせて欲しいと思ったんだ」
「え…」
自分だけ屋上に呼ばれた時から桐山の用事がセックスである事は覚悟していたが、正直自分からリードするのは恥ずかしいので気が進まなかった。
あの後、桐山がチョコポッキーの箱を持ち帰ったので、とっくに食べてしまっているかと思ったが考えが甘かったようだ。
「中身、全部充が食べさせてくれると言っていただろう?」
「うん、言ったけど…」
「では、頼む」
桐山が鞄を漁り、ポッキーの箱を充に差し出した。
仕方なく受け取ろうとして、充はポッキーの箱を見て思わず固まってしまった。
桐山が差し出した箱は、形が変わるくらいにギュウギュウに中身が詰め込まれていたのだ。
最初は驚いた充だったが、桐山が自分で同じチョコポッキーをたくさん買って詰め直したのだと思うと、何だか可笑しくなってきて思わず笑ってしまった。
「何が可笑しいんだ」
「ボス、俺があげたのはこんなに中身が詰まってなかっただろ。ズルはダメだよ」
「ダメか」
「でも、ボスがこんな事するなんて思わなかったよ。ボスも結構子供っぽいトコがあるんだな」
「………中身がなくなったら、もう充に食べさせて貰えないと思ったんだ」
ムリヤリ押し切ってくるかと思ったら、どこかしょんぼりとしたように言う桐山を見て、充は何だか切ない気持ちになってしまった。
「そんなに俺に食べさせて欲しい?」
「食べさせて欲しい。積極的な充は滅多に見られないから」
「しょうがないな、ボスは」
困ったように笑うと、充は桐山にギュッと抱きついた。
「ボスが望むなら、ポッキーがなくても食べさせてあげるよ」
「そうか、では…」
「え? ちょっと待って。今はまだポッキーあるだろ。口移しで食べないの?」
顔を近付けてくる桐山の顔を、充は思わず押さえてしまう。
「ポッキーがなくても食べさせてくれるなら、今はポッキーはいらない。充の方が欲しい」
「もう…ホントにボスはワガママだな」
充はそう言って目を閉じて、顔を少し上に向ける。
桐山は充の頭を軽く撫でてから、唇を重ねてきた。
啄むようなキスを繰り返した後ゆっくりと目を開けると、鞄の上に置かれたポッキーの箱が桐山の肩越しに見えた。
形が変わるくらいに中身が詰め込まれたポッキーの箱が桐山の気持ちを表しているようで、充は桐山に気付かれないようにクスッと笑った。

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作品解説でも書きましたが、フリー作品で以前書いた話の続きを書いてスミマセン(汗)
続きと言っても、それぞれ単独で読めるようにはしたんですけどね…
今回カプ物のネタがなかなかいいのが思いつかなくて、ネタ考えてて遅くなるよりは時期ハズレで続き物っぽくても桐沼バレンタインネタ第二弾を書いちゃえ! と思い、書かせていただきました。
何だか充の性格が支離滅裂になってますよね…(汗)
最初の方は、初めてじゃないのにポッキーチューするだけでめっちゃ恥ずかしがってるし、後の方ではウチのいつもの受充らしくなく淫乱な言動してるしで、自分でも書いてて「何じゃこりゃ」って感じでした(苦笑)
本当はエッチシーンはずっと机の上でする予定だったのですが、最近「桐山関連の裏作品で48手をコンプリートしよう!」のコーナーも全然空欄が埋まらない状態だったから、ムリヤリ椅子でする方向に持って行きました。
でも、椅子でするきっかけの「ボスが…遠いよぉ…」の充の一言は自分でもかなり気に入ってるので、結果オーライって事で(苦笑)
もちろん、バレンタイン当日のあの後は、ボスはたっぷりと充を食べましたし、後日談の方も屋上でいちゃいちゃアンアンでしたので、その辺はお好きなように脳内で補完して下さいませ。
今回も出来るだけラブラブな桐沼&充の事が大好きなボスを目指してみたんですが(ボスが充を後ろから抱き締め、とか、ポッキーの箱パンパンにしたりとか)、読者様にそう感じていただけたら嬉しいです。



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