夏の終わり


楽しかった夏休みも終わり、新学期が始まって3日目。
まだ夏休み中の夜型生活の習慣が直らず、充は学校に行って疲れきった体を居間の畳の上に横たえていた。
「ボスに毎日会えるのは嬉しいけど、朝早く起きて学校行くのはダルいなぁ…」
そう呟いて大きく伸びをすると、畳の上に置かれていた古新聞が目に止まる。
「あ、これ…」
充は古新聞の間に挟まっていたチラシを一枚抜き取った。
割と大型な室内プールの割引券だった。
「ここ、行ってみたかったんだよなー。このチラシを持って行けば半額か…」
念の為、チラシの有効期限に目を移す。
そこには明日の日付が書かれていた。
しかも、その日がプール納めだという事も書かれていた。
「何だよ、もう…今度の休みにでもボスを誘って行こうと思ったのに。
プール納めまでに二人で泳ぎに行きたいと思ってたんだけどな…夏休み中はあんまり会えなかったし…」
頬を膨らませてチラシを投げ捨てる。
しかし、未練があるのか充は再びそのチラシを手に取ると、諦めきれないような表情でそれをじーっと見つめていた。

数十分後、充は携帯を手にしていた。
自分から桐山にかける事はあまりないので(本当は毎日でも電話をかけて、メールも頻繁に送りたいと思っているのだが、
桐山の迷惑になりそうなのでいつも我慢しているのだ)、ボタンを押す指が心なしか震えている。
呼び出し音が鳴っている間、自分がやろうとしている事にまだ少し迷いがあるのか、充は不安な気持ちでいっぱいになっていた。
『もしもし?』
「あ、ボ、ボス…いきなり電話してごめん。今、大丈夫かな」
『ああ、構わないよ』
「あのさ、突然で悪いんだけど、プールに行かないか? 俺と二人で」
『プールか…そう言えば今年の夏は学校の授業でしか泳いでいなかったな。充とプールに行くのも悪くない。
でも、いつ行くんだ? 今度の休みかい?』
「それが…明日なんだけど、ダメかな?」
『明日? 明日は学校があるが…』
「サボってさ、ちょっと遠い所だから朝から行こうと思うんだけど…」
『………』
「あ、やっぱ学校サボるのは嫌だよね…ごめん」
充自身も新学期が始まってすぐに、自分だけならともかく桐山に学校をサボらせるのはどうかと思ったのだが、
桐山とプールに行きたいという欲求には勝てず電話をかけてしまったのだ。
『分かった。学校をサボってプールに行こう』
「えっ!?」
自分から誘っておいてなんだが、内心OKが貰えるとは思っていなかったので思わず驚きの声をあげてしまう。
『明日行くんだろう? プール』
「そうだけど…でもホントにいいの? 学校サボる事になるけど…」
『たまにはそういうのもいいんじゃないかな』
「ボス…ありがとな。OKしてくれて。それじゃ、明日9時に駅前で待ってる」
『ああ、分かった…9時に駅前だな』
「分かってるとは思うけど…プールに行くんだから水着とかタオルちゃんと持って来いよ?」
『ああ』
「それじゃ、また明日な。おやすみ、ボス」
『また明日…おやすみ』
電話を切った後、充はチラシ片手に小さくガッツポーズを取った。

翌朝9時に駅前で待ち合わせた二人は、電車に乗ってプールに向かった。
そのプールは城岩町から少し離れているのが難点だったが、何種類ものプールやウォータースライダーがあるので、
時間とお金をかけてでも行く価値はありそうだった。
プールに着くと二人は受付で入場料を払い(最初桐山は自分の分は払うと言ったのだが、誘ったのは自分だし学校をサボらせて
しまったから、と充は桐山からお金を受け取らなかった)、園内で飲食物などの支払いをする為のリストウォッチ型のキャッシュレスタグを購入して更衣室に向かった。
更衣室には、まだ学校が始まっていない子供達とその親がちらほらしていた。
「お子ちゃまはいいよなー。中学生よりも夏休みが長くて」
充は適当に空いているロッカーを選び、着替えをしながら何気なく呟いた。
「何で夏休みが長いといいんだい?」
「だって、夏休みが長い分、毎日遊べる日も長いって事じゃん。学校なんてかったるいし」
「そうか…俺は夏休みの間、早く学校が始まればいいと思っていたんだが…」
桐山も着替えながら、どことなく淋しそうな表情で呟いた。
「何で? 学校が始まっちゃったら毎日朝から晩まで遊べなくなるのに」
「俺は夏休みでもいつもと同じ生活を送っていたから…長期の休みの時は習い事や出かける事が多くなる分、
充と会う時間が減って何だかつまらない毎日だった…だから、学校が早く始まればいいと思った」
「ボス…」
桐山がそんな事を考えていたなんて意外で、思わず脱いだ服を片付けていた手が止まってしまう。
「充は…夏休みの間は楽しかったみたいだな」
「そりゃ楽しかったけど…ボスの事思い出すと淋しくなったよ。ボスも夏休みくらい毎日遊べたらいいのに。
そしたらボスといっぱいいろんなトコに遊びに行けるのにって、ずっと考えてた」
「そうか…」
充の言葉を聞いて、桐山の顔がどことなく嬉しそうになる。
「ボス、夏休みにあんまり一緒に遊べなかった分、今日はおもいっきり楽しもうな!」
「そうだな」
着替えを終え、コインロッカーに荷物を預けた二人は手を繋いでプールへと向かった。
この時充は、今日は桐山とは厭らしい行為抜きで純粋に楽しもうと心に決めていた。

ここのプールは普通のプールの他に流れるプールや波のプール、ウォータースライダーまであって、
一日いても飽きない造りになっていた。
二人はあちこちのプールをハシゴした。
充は流れるプールや波のプールを初めて体験し、物珍しそうにしている桐山が可愛くて堪らなかった。
子供用プール以外のプールを一通り楽しんで少し休んだ後、二人はウォータースライダーをする事にして入り口に向かった。
「登ってみると随分高く感じるなー」
充は登ってきた階段を見下ろして、目を丸くする。
「こんな高い所から滑り降りるなんて初めてだよ」
「あ、ボスもしかして、ちょっと怖かったりする?」
ニヤニヤ笑いながら振り向くと、桐山は少し首を傾げて何か考えているようだった。
「初めてだから、怖いかどうかは分からないよ」
「でも、こんな高いトコから滑り降りるって考えると、何かドキドキしない? 俺、実はちょっとドキドキしてる」
「そうなのか?」
桐山は苦笑いしている充の左胸にそっと触れてみた。
「ボ、ボス?」
「本当だ。少し鼓動が早いようだ。怖いなら無理はしない方がいいんじゃないか?」
「こ、怖くなんかないよ。これくらい全然平気!」
桐山に触れられてますます鼓動が早くなったのを知られたくないのと、これくらいの事でビビッていると思われたくなくて、
充は早足で階段を登り始めた。
桐山も少しスピードを上げて充の後についていく。
一番高い位置にあるウォータースライダーの乗り場に辿り着くと、退屈そうにしている係員しかいなかった。
身長制限があるので子供はこの高さのウォータースライダーは利用出来ないし、付き添いの大人にこの高さから滑り降りようと思う勇気のある者はいないのだろう。
「どっちが先に行く?」
「どちらでも構わないよ」
「じゃ、俺から行くよ。俺がお手本見せてやる」
これくらい怖くない、と勇気あるところを桐山に見せつけたいという下心もあり、充は自分が先に行く事を決めた。
「ボスもちゃんと滑って降りて来いよ」
「ああ、分かった」
係員に二人共ウォータースライダーを利用する事を告げると、看板に書かれている滑り方の説明通りに水の流れる滑り台の上に
体を横たわらせた。
この瞬間は充もさすがに緊張してしまう。
鼓動がまた早くなり始めた。
桐山は今何を考えながら自分を見ているんだろう。
自分からは見えないので、余計に気になってしまう。
充がそんな事を考えている内に、係員が肩に触れてきて、そのままグッと充の体を押し流す。
急傾斜に一瞬フワッと体が浮いてヒヤヒヤするが、そのまま水と一緒に高速で滑り降りていった。
摩擦でおしりが熱くなってくる。
水着に穴が空いてしまうのではないかと心配している間に一番下まで到達してしまった。
仰向けになったまま流され続け、ゆっくりと減速していく。
完全に止まってから充はゆっくりと体を起こして滑り台から降りた。
「ケツ痛ぇ…ん?」
摩擦で熱くなったおしりを擦ろうとして、水着が食い込んで半ケツ状態になっているのに気付いて慌てて元に戻す。
誰も見ていないかキョロキョロと周辺を見回している内に、後から滑り降りてきた桐山が水飛沫を上げながら自分に近付いてくる。
近付いてくるにつれ徐々に減速していき、ちょうど充の目の前でピタリと止まった。
目をパチパチさせて体を起こすと滑り台から降りて、充の元に小走りで近付いてくる。
「ボス、どうだった? 怖かった?」
無表情のままでいる桐山に充が尋ねる。
「別に怖くはなかったよ。体が一瞬浮いたので少し驚いたが」
「あ、俺もー」
桐山と同じなのが嬉しくて、充はニコニコと笑った。
「それと…おしりが熱かった」
「おしり…ボス、ちょっと後ろ向いて!」
嫌な予感がして桐山に後ろを向かせると、充の予想通り桐山の水着はTバックのようになってしまっていた。
しかも、擦れた所為で白いおしりが赤くなってしまっている。
「水着食い込んじゃってるよ…」
「ああ、すまない」
充は食い込んでしまった桐山の水着を丁寧に直してあげた。
何となく恥ずかしくて顔が赤くなる。
「これでよし、と。ボス、おしり赤くなっちゃってたけど大丈夫か?」
「少しヒリヒリする…」
「そっか…それじゃ水に入ったら染みるかもな。休憩も兼ねてボートでも乗ろうか」
「いいんじゃないかな」
「よし、じゃあボート借りに行こう」
充の脳裏にはまだ先程の水着が食い込んだ桐山のおしりが焼きついて離れなかったが、
邪な事は考えないように必死でその映像を頭の中から振り払った。
そんな充の胸の内を知ってか知らずか、桐山はあどけない子供のような表情で充についていく。
プールサイドの柵にかけておいた大きめのタオルを二人の体にかける為に取ってきた後、
二人乗り用のゴムボートを借りて流れるプールに浮かべた。
「ボス、気を付けて」
先に乗り込んだ充は桐山に手を差し出す。
桐山は充の手を掴み、そのままボートに乗り込んだ。
プールの縁を蹴ってボートを流れに乗せると、二人でボートに横たわり下半身にタオルをかけた。
微かに吹いている風が心地良く感じる。
しばらく目を閉じてボートの底から感じる水の感触を楽しんでいた。
ボートに乗って何周くらいしたのだろうか。
随分長い間目を閉じていたような気がするが、桐山が身を寄せてきたのに気付いて目を開く。
「ボス、ここだと監視員から丸見えだから、あんましくっついたらダメだよ」
「そうなのか?」
いつもなら少し身を寄せると、優しい笑みを浮かべながら抱き寄せてくれる充に拒否されて、
桐山の表情が酷く悲しそうなものになった。
その桐山の表情を見た充の胸がズキンと痛む。
『監視員はそんなにたくさんいないし、タオルかけてるからちょっとくらいならいいかな…』
エッチはしない、と決めたはずなのに、一旦こんな事を考え始めると止まらなくなってしまう。
「ボス…」
ちょっとだけなら、そう思いつつ充がタオルの中で桐山のおしりに手を伸ばそうとしたその時、ボートの底から何か強い圧迫を感じ、次の瞬間には水の中に放り出されていた。
「やった、引っくり返ったー!!」
「これで三個目だー!」
水の中から顔を上げると、少し離れた所で子供達がはしゃいでいた。
どうやら監視員の目の届きにくい場所を狙ってボートを引っくり返す悪戯をしているようだ。
「こらー! お前等何やってんだ! いくらガキでもフザけた事してると容赦しねーぞ!?」
充が怒鳴りつけると、子供達がビクッと震えて顔を見合わせる。
「やべー、ヤンキーのボート引っくり返しちまった」
「ヤンキー怖えー」
悪態をつきつつ、子供達は示し合わせたように一目散にその場から逃げ出した。
「誰がヤンキーだ。まったくもう…あのガキ共ムカつくなー! ボス、大丈夫か?」
「ああ。俺は平気だ」
「そっか。それならいいけど。何かせっかくのいい雰囲気が台無しだな。そろそろお昼だし、気を取り直して
ご飯でも食べに行こっか?」
「…そうだな」
「じゃ、ボート返して売店に行こう」
充はひっくり返ったまま流れて行ってしまったボートとタオルを回収しに行った。
この時桐山が淋しそうな、本当はもっと充とゴムボートに乗っていたかったと言わんばかりの表情になっていた事に
充は気付いていないようだった。
ゴムボートを掴んでプールサイドに放り投げるとタオルも掴んでプールから上がり、充は桐山の近くまで小走りで戻った。
桐山もプールの端まで泳いで移動し、差し出された充の手を掴んでプールから上がる。
その後、二人はゴムボートを返却して飲食物を販売している一角へと歩き出した。
「ボス、何か食べたい物ある?」
「こういう所は初めてでよく分からないから充に任せるよ」
「分かった。それじゃボスはその辺に座って待ってて」
桐山がコクンと頷くのを見て、充は手近な売店に向かった。
そして、焼きそばとフランクフルトを2つずつと、フローズンのメロンとコーラを1つずつ買って桐山の所に戻った。
「お待たせ、ボス」
「早かったな」
「全然並んでなかったからね…はい、これボスの分」
ビニール袋から焼きそばとフランクフルトを取り出して桐山の前に並べる。
「あ、フローズン買ったんだけど、ボスはメロン味とコーラ味、どっちがいい?」
「フローズン?」
初めて聞く言葉に、桐山は小首を傾げる。
「飲み物だよ。シャーベットをジュースにしたようなモンなんだけど」
「どっちでもいいよ。充が飲みたい方を飲めばいい」
「うーん、そう言われると悩んじゃうな。どっちも好きだから…それじゃ、二人で半分ずつ飲もう」
「そうだな」
フローズンをテーブルの中央に置くと充は桐山の対面に腰を下ろし、ビニール袋から自分の分の焼きそばとフランクフルトを
取り出した。
「いただきまーす」
「いただきます」
充は割り箸を折ると、焼きそばを美味しそうに頬張り始めた。
桐山も充を真似て焼きそばに口を付ける。
「やっぱこういうトコに来たら昼飯は焼きそばだよなー」
「そうなのか?」
「他の人はどうだか知らないけど、俺はいつもプールに行った時は焼きそば食べてるよ。
ボスの口には合わないかもしれないけど…」
「そんな事はないよ。この焼きそば、美味しいと思う」
「そう? それならいいんだけど…」
例えお世辞だったとしても、自分が普段食べている物を桐山が美味しいと言ってくれるのは何だか嬉しかった。
「フローズンもさ、こういうトコでないと売ってないから必ず飲むんだ」
「そうか…」
充の言葉を聞いて、桐山はコーラ味の方を手に取ると、ストローで少しだけ中身を吸い上げた。
「変わったジュースだな。でも、これも悪くない」
今度はメロン味の方に口を付ける。
そんな桐山を充は優しい表情で見つめていた。
「どうした? 俺の顔に何かついているかい?」
充の視線に気付き、桐山はストローを咥えたまま尋ねてくる。
「いや、俺が普段食べてる物をボスが美味しそうに食べてるのって何か嬉しいから…」
「何で嬉しいんだい?」
「えっ…それは…」
桐山の更なる問いかけに、充は言葉を詰まらせた。
桐山は答えを知りたいのか、じーっと充を見つめたままフローズンを飲んでいる。
「ボスってそういう物食べた事なくて、いつもは俺が見た事もないようなご馳走食べてて手の届かない存在に感じられるけど、
俺が普段食べてる物を美味しそうに食べてるのを見ると、少しだけボスが近くに感じられるから…」
観念した充は、困ったような顔をしてモジモジしながら桐山の質問に答えた。
「俺も…」
「え?」
「充が普段食べている物を食べると充の事がもっと分かるような気がするし、俺が食べた事がない物で充の好きな食べ物は
いろいろ食べてみたいと思う」
「ボス…」
桐山の口から意外な言葉を聞いて、充の顔が赤くなる。
桐山が自分の事をもっと知ろうとしてくれている。
自惚れかもしれないけれど、そう思うと堪らなく嬉しかった。
「充はもう食べないのかい?」
ボーッとしたまま微動だにしない充を見て、桐山が声をかける。
「え? あ、いや、食べるよ」
声をかけられ我に返った充は、まだ手をつけていなかったフランクフルトにケチャップとマスタードをかけた。
その手つきを、何故か桐山はじーっと見つめている。
不思議に思いつつも充がフランクフルトに齧り付くと、桐山は充の真似をしてフランクフルトにケチャップとマスタードをかける。
『ボス、もしかして食べ方分かんなかったのかな…』
ナイフとフォークでお上品にボイルソーセージを食べる桐山を想像しながらフランクフルトを頬張っていると、
桐山も口を開けてパクリ、とフランクフルトに齧り付いた。
「棒が刺さっているソーセージなんて初めて食べたよ」
「やっぱりねー」
自分の予想が当たり、思わず苦笑いする充。
「でも、こういうのも悪くないな」
「うん、ここのフランクフルト結構イケるよな」
最初は桐山の口に合わなかったらどうしようと不安に思っていた充だったが、焼きそばもフランクフルトもフローズンも
気に入って貰えたようでホッとしていた。
しかし、パクパクとフランクフルトを頬張る桐山を見つめている内に、別の問題が起こってしまった。
フランクフルトを咥えている桐山を見て、桐山に口でして貰っている時の事を思い出してしまったのだ。
『バカ! 何考えてんだ、俺!!』
桐山に見付からないように反応しかけた股間を押さえて気持ちを落ち着かせる。
『今日はエッチな事はしないって決めたんだ。夏休みにあんまり遊べなかった分、
今日はボスと健全な思い出作りしようと思ってるのに!!』
そう自分に言い聞かせてはみるが、視線はつい桐山の口元に注がれてしまう。
しまいにはフランクフルトが自分の欲望の塊に見えてきて、充は邪念を振り払う為にブンブンと首を左右に振った。
「どうしたんだ?」
「な、何でもな…!?」
先程から挙動不審な充を、桐山はフランクフルトを咥えたまま小首を傾げて見つめていた。
「……ボス、俺の方を向く時はフランクフルトを口から出して」
「何でだ」
「どうしても…お願い」
「よく分からないが、気を付けるよ」
疑問に感じつつも、桐山は充から顔を背けて残りのフランクフルトを食べ始める。
一方充は、フランクフルトを咥えたまま小首を傾げる桐山がトドメとなって、完全に直立してしまった股間を押さえ、
頭の中で九九を唱えながら残っていたフローズンを飲んで、火照った体を静めていた。
九九とフローズンが効いたのか、買って来た物を全て食べ終える頃には充の心も体も元通りに落ち着いていた。
「あー、美味かったなー。ボス、あれで足りた? 足りないなら他にも何か買って来ようか?」
「いや、これで十分だよ。ご馳走様」
「ううん、今日は俺のワガママに付き合ってくれたんだから、これくらい気にしないでよ。お腹空いたらまた後でおやつ代わりに
何か食べような」
「そうだな。それより、この後はどうするんだ? プールはもう全部回ったと思うんだが」
「うーん、そうだなー…食べたばっかで泳ぐのはキツいから、もう少し休もうか。確か端の方にミニスパがあるハズだから」
「スパもあるのか」
「うん、ホントにちっちゃいヤツみたいだけど。誰も入ってないといいな。先越されないうちに行こうか」
「ああ」
二人は空いた器をゴミ箱に捨てると、敷地内の一番端にあるスパゾーンへと向かった。
「あ、ラッキー。誰もいないぜ」
充は二ッと笑うと、3、4人入ったらいっぱいいっぱいになってしまうようなミニスパに駆け寄った。
「泡がボコボコ出てる。これ気持ちいいんだよな。ボスも早く来いよ!」
スパに足を入れてはしゃぐ充を見て、桐山は僅かだが表情を緩めると、自分も駆け寄りスパの中に身を沈めた。
「プールに来てスパというのも不思議な感じだな」
「東京には水着のまま入れる、もっとでっかくていろんな種類の温泉とプールがある遊園地があるんだってさ。
いつか二人で行けたらいいな」
充はニコニコ笑いながら、泡が出ている所の近くに身を沈める。
「…そうだな」
密着しなければ二人で入れないくらい狭い訳ではないのに、何故か桐山はピタリとくっつくように充の隣に移動してきた。
『あれ? もしかしなくても、今、俺達いい雰囲気だったりする?』
スパの周りには監視員は一人もおらず、プールの方から子供達がはしゃぐ声が聞こえる。
桐山は何も言わず、自分に身を寄せてどこか遠くを眺めているようだった。
『ここなら、何をしても誰かに邪魔される心配はないよ』
頭の中で、もう一人の自分が妖しげな笑みを浮かべながら誘いの言葉を投げかける。
『ダメダメ! いつもエッチばっかだから、たまには普通の中学生同士みたいに健全に遊ぶって決めたんだ。
何か話してそういう雰囲気にならないようにしなきゃ!』
充はあれこれ頭を悩ませ、ふと、先程飲んだフローズンの事を思い出した。
「なぁ、ボス。舌出してみて」
「舌? こうか?」
充に言われ、突然の事に疑問を感じつつもベー、と舌を出した。
「あ、やっぱり。メロン味のフローズン飲んだから舌が緑色になってる。ほら、俺も」
自分もベー、と舌を出して、緑に染まってしまった舌を桐山に見せた。
「メロン味のフローズンとか氷メロン食べると舌が緑になっちゃうんだよな」
「そうなのか…知らなかったよ」
「しばらくすれば消えるから大丈夫だよ、ボス」
「ああ…」
そう言いつつも、自分の緑色になった舌に興味があるのか、必死に舌を突き出して染まった部分を見ようとしている。
舌を突き出したままの桐山を見ている内に、またも充は厭らしい妄想をしてしまった。
厭らしい事ばかり考えてしまう自分が情けなくて、思わず頭を抱えてしまう。
「どうした、充。頭でも痛いのか?」
「あ、何でもな…!?」
突然舌を出したままの桐山に顔を覗き込まれ、充は驚いた反動で立ち上がってしまった。
「…充、やっぱり変だぞ。具合でも悪いのか?」
「ホントに何でもないよ! いきなりボスの顔が目の前にあったから、ちょっとびっくりしただけ」
「そうか…」
充に誤魔化されているようで腑に落ちない桐山は、固い表情のまま下を向いてしまった。
そんな桐山を見て充は少し罪悪感を感じたが、本当の事を言う訳にもいかず、ただ桐山をじっと見つめていた。
しばらくの沈黙の後、ふと顔を上げた桐山は充の水着の僅かなズレから見える日焼け跡に興味を持ったのか、
手を伸ばして腰の部分にそっと触れた。
「ボ、ボス?」
咄嗟に桐山の手を避けようとした充だが、これ以上桐山を傷付けるような事はするまいと、
桐山に触れられながら必死に冷静を保とうとした。
「随分焼けたんだな」
「えっ? そりゃ、毎日のように竜平や博と遊びまくってたからなー。市民プールが安いから何度も行ったし」
「そうか…それでは、笹川と黒長は俺の知らない充をたくさん見ているんだな…」
僅かに聞き取れる程の小さな声でそう呟くと、桐山は今まで一度も見せた事のない、酷く淋しげな表情になった。
気が付くと、体が勝手に動いていた。
湯の中に身を沈め、押し付けるように自分の唇を桐山の唇に重ねていた。
桐山は突然の事に目を大きく見開いている。
唇を離すと、充は気まずそうな顔をしながら桐山から目を逸らす。
「ごめん…今、ボスにキスしたくなって…」
「…」
桐山は返事をせず、自分の唇を指でそっと撫でている。
「何か…ボスが凄く淋しそうに見えて…だから俺…」
「いつもしている事なのに、何で謝るんだい?」
「だって…いつも俺達二人だけで会うとエッチばっかりだから、夏休みあんまり会えなかったし、
たまにはちゃんとした思い出作ろうって考えてたんだ。だから、そういう雰囲気になる度に変な態度取っちゃって…
でもそれがボスの事傷付けちゃったみたいだ。ホント、ごめん…」
しょぼんとしている充を見つめながら、桐山は何か考えているようだったがふいに口を開いた。
「二人でプールに来た、というだけでちゃんとした思い出になるんじゃないか? 俺は充と出かけた時の事は全部覚えているよ。
そういうのを、思い出と言うんじゃないのか?」
「ボス…」
「…してくれないか?」
「え?」
「もう一度…キス、してくれないか? 何故だか分からないけれど、今充にキスして欲しいって…そう思ったんだ」
少し頬を赤らめながら言う桐山を見て、充は胸がキュッと締め付けられるような気持ちになった。
「いいの? こんな所で…」
桐山はコクン、と無言で呟く。
充は桐山の頬に手を添えると、今度はそっと唇を重ねた。
初めてする行為でもないのに、桐山の唇のマシュマロのような柔らかさにドキドキしてしまう。
その柔らかさを楽しむように、角度を変えて何度も口付けた。
最後に唇ではむ、と桐山の唇を優しく噛んでから、充は名残惜しそうに桐山から顔を離した。
唇が離れた瞬間、ウットリとしているような表情の桐山の口から小さな吐息が漏れる。
あまりの艶っぽさに、充は堪らずゴクッと唾を飲み込んだ。
「なぁ、ボス…プールでエッチしちゃったって思い出もアリだと思う?」
自分で決めずに桐山に委ねるのは卑怯だと思いつつも、確認の意味も込めて尋ねた。
「いいんじゃないか? そういうのも…」
充を後押しするかのように、桐山が身を寄せてくる。
二人で横に並ぶようにスパの底に腰を下ろすと、お互いの腰を抱き合い再び唇を重ねた。
触れ合うだけのキスから、徐々に互いの舌を求め合う激しいキスに変わっていく。
誰かに見付かりはしないだろうか。
ふとそんな考えが頭をよぎったが、桐山の舌と自分の舌を擦り合わせている内にどうでもよくなってしまった。
遠くで聞こえる子供達の声も、もう二人の耳には届いていなかった。
「んっ…ぅん…」
「ふ…はぁ…」
人前だという事も忘れ、箍が外れたようにお互いの舌を貪る。
目を閉じている所為か、唾液を分け合うピチャピチャという音がやけに耳についた。
水中で手を握り合い、更に体を密着させて深く深く口付ける。
口内の隅々まで舌で弄り、最後にチュ、チュ、と桐山の舌を軽く吸い上げてから充は唇を離した。
口の端から細い光の糸を垂らし、虚ろな目になっている桐山が妙に艶っぽくて、もう一度だけ軽く口付ける。
「ボス、ずっとお湯の中にいたらのぼせちゃうから少し上がった方がいいよ」
そう言って桐山の体を抱きかかえ、スパの縁に座らせる。
桐山の体は同じ男とは思えない程軽くて、強く力を入れたら壊れてしまいそうだった。
ずっと湯に浸かっていた所為か、はたまた激しいキスの所為か、桐山の白く透き通るような肌がほんのり桜色に染まっている。
水着に包まれたその部分は少し膨らんでいた。
充はチラ、とプールの方に視線を向けて誰もこちらに気付いていないのを確認すると、桐山の足の間に自分の体を割り込ませて
その体をそっと抱き締めた。
「ボス、誰かがこっちに来そうだったら教えて。俺、多分夢中になってそこまで気を配れないと思うから…」
「それなら、俺も駄目だと思う」
「どうして?」
「充に抱かれると、熱に冒されたみたいに頭がボーッとなって、周りが見えなくなるんだ」
「ボス…」
桐山の言葉を聞いて、充は顔を赤くしながら照れたように微笑んだ。
「それじゃ、見付かった時は一緒に怒られよう」
「ああ…んっ…」
充の唇が首筋に触れると、桐山はピク、と体を震わせた。
首筋から肩口、そして鎖骨にゆっくりと唇を這わせていく。
桐山は充の頭を掻き抱くと、目を閉じて充の唇が体に触れていく感触を味わった。
初めは唇で触れるか触れないかの微妙な愛撫を与えた後、今度は舌でツツー、と唇の通った場所をもう一度なぞる。
もう一方の肩にも同じように愛撫を与えると、桐山は眉を寄せ、荒く息を吐きながら充の愛撫に身を委ねている。
充の頭が徐々に下がってくると、新たな愛撫の予感に身を打ち振るわせた。
赤い舌が、先程からの愛撫で硬く張り詰めた胸の突起をそっと撫でる。
「んっ…んっ…」
「ボスのココ、もうこんなに硬くなってる。こんなピンピンになった乳首のままプールの方に戻ったら、
ボスがエッチだって事みんなにバレちゃうから何とかしなくちゃね」
指で硬くなった薄桃色の実を弄びながら、もう片方の実を舌先でねっとりと愛撫する。
舌の上で実を転がされる度に、桐山の体がピクン、ピクンと跳ね上がった。
充が両方の実へ十分過ぎる程の愛撫を与えると、水着の膨らみは更に増して、
その下の雄の象徴をくっきりと浮かび上がらせていた。
「あっ、ボスってば今度は下をこんなにして。これじゃますますプールの方に戻れないよ?」
桐山の股間が膨張して熱を持っている事に気付いた充は、その部分を優しく手の平で撫でながら桐山の顔をじーっと見つめる。
「なら、お前が何とかしてくれ」
充の手が膨らみを撫で上げる度にハッ、ハッと息を吐きながら、桐山は少し辛そうに言った。
「分かった。ボスのココ、俺が責任持って元に戻してあげるね」
少し強めに揉むように愛撫した後、充は桐山の水着の足の付け根部分に指を引っ掛け、グイッと横に引っ張った。
水着と体の間に出来た隙間から、桐山の可愛らしいピンク色の先端がポロッと顔を出す。
「どうして水着を脱がせないんだ?」
「こんなトコで素っ裸になったら、誰か来た時言い訳出来ないだろ? 大丈夫、脱がせなくてもいつも通りたっぷりしてあげるから」
充は横にはみ出た桐山の陰茎に指を絡ませると、軽く上下に扱いた。
「あ…ハッ…」
上下に扱く度に充の指がぬめりを帯びてくる。
「ボス、凄いヌルヌルになってるよ。どうしたの? こんな、誰かに見付かるかもしれないトコでエッチしてるのに感じちゃったの?」
水着を身に付けたまま性器を弄られるという初めての体験に戸惑いながらも、
充の問いかけに答えるようにコクコクと首を縦に振った。
桐山の先端からはまた半透明な液体が滲み出て充の指を汚す。
粘着質な液体でたっぷりと濡れたソコは、充が上下に手を動かす度にぬちゅぬちゅと卑猥な音を立てていた。
「いっぱい感じてるんだね…さっきよりヌルヌルしてる。俺がキレイにしてあげるね」
手を動かしたまま桐山の股間に顔を近付けると、丁度先端の切れ込みから滲み出てきた半透明の液体をペロ、と舐め取った。
根元の方だけを扱くようにして、薄桃色の先端をゆっくりと口に含む。
根元まで咥えずに唇で先端を揉むように愛撫した。
「ん、くっ…」
ソフトに愛撫されるのが好きな桐山は、目を閉じて先端に与えられる快感に意識を集中させる。
先端を口の中にすっぽり包み込むと、カリの部分を唇で揉んで刺激を与えつつ、粘着質な液体を流し続ける先端の切れ込みを
舌先でクリクリと弄り始めた。
「ひ…ぃっ」
舌先を少しだけ切れ込みに食い込ませると、優しく充の頭を撫でていた桐山の手に力が込められる。
しばらく舌先で尿道をグリグリと弄った後、唾液でベトベトになった先端を口の中から解放する。
今度は先端の括れをなぞるように、舌をツーッと這わせた。
時々先端の裏側を舌で強めに刺激するのも忘れなかった。
桐山は先端が弱い事を知っているので、そこに集中してたっぷりと唇や舌で奉仕した。
充に愛撫されている間、桐山は声が漏れぬように手で口を押さえ、真っ赤な顔で体を捩っていた。
桐山の艶っぽい声が聞けないのは残念だが、近くに誰もいないとはいえ人前なのだから仕方ない。
「なぁ、ボス。そろそろイキたいんじゃないか?」
先端がヒクヒクと痙攣し始め、桐山の絶頂が近い事に気付いた充は先端から口を離して顔を上げる。
手は相変わらず桐山の根元を扱いていた。
桐山は口を押さえたまま、潤んだ瞳で充をじっと見つめる。
『早くイカせて欲しい…』
桐山の瞳はそう訴えかけていた。
「いいよ、今イカせてあげる。いっぱい出していいからな」
根元を扱く手の動きを止めると、小振りながらも一生懸命天を仰ぐ桐山の陰茎を唇で扱くようにしながらゆっくりと根元まで
含んでいった。
女を知らない桐山だったが、膣に挿入したらこんな感じなのだろうかと、そんな考えが頭を過ぎる。
充は桐山の陰茎を口に含んだまま、その側面にヌラヌラと舌を絡ませた。
ぬめりを帯びた蛇が陰茎全体に絡み付いてくるようで、その何とも言えない快感に体を仰け反らせる。
桐山の形と味を十分に堪能した後は、桐山を絶頂へと導く為に唇を窄めたまま頭を上下に動かした。
「ふっ・・・ぅん、んんーーーっ!!」
声のトーンが上がったのか、口を押さえている手の平の下から桐山のくぐもった声が漏れ聞こえる。
先程よりは少し荒っぽいが、側面に舌を絡ませながら棒キャンディをしゃぶるようにチュパチュパと桐山の陰茎を
口に出したり入れたりを繰り返す。
しばらくすると、無意識だと思われるが桐山が充の口の動きに合わせて腰を動かし始めた。
早く体の中に燻っている熱を解放したくて必死に腰を動かす桐山が愛しくて、充の愛撫にも自然と力が入る。
最初はバラバラだった二人の動きが徐々に一定のリズムを刻むようになり、ピタリとシンクロしたその時、
桐山の中で燻っていた熱が弾け、とてつもない快楽が一気に駆け上がってくる。
「……っ!」
充の頭が離れていかないように両手でガシッと押さえながら、桐山はおもいっきり体を弓形に仰け反らせて絶頂に達した。
充の口内に熱い塊のような吐液が流れ込んでくる。
スパのお湯を汚さぬ為に、充は桐山の先端から吐き出された吐液を全て飲み込むと、
柔らかくなりつつあるソレを口に含んだまま尿道に残った物と側面に付着した白濁液を吸い取った。
充が口を離すと、キレイになった陰茎が水着の脇からはみ出したままだらんと頭を垂れる。
そのままの状態が少し情けなく感じたので、充は通常時のサイズに戻ったソレを水着の中に戻してあげた。
「これで人前に出ても大丈夫だな」
仰け反った勢いでそのままスパの縁に横たわってハァハァと荒い息を吐いている桐山を抱き起こし、
汗が滲んでいる額に口付けた。
「いや、大丈夫じゃないよ充」
「どうして?」
「俺は治まったが…」
桐山はまだ気だるい体を引き摺るように立ち上がると、フラフラした足つきで湯の中に身を沈める。
「今度は充が人前に出られない状態になってしまっている」
そう言いながら、立ち尽くしていた充の股間に顔を近付け、桐山への奉仕ですっかり形を変えてしまったソレを
水着の上からそっと擦った。
「今度は俺が何とかする…」
充の水着を両手で掴むと、そのまま一気にずり下げた。
「あっ…ボスってば、こんなトコなのに…」
誰かに見付かるかもしれない場所で全裸に近い状態にされ、充は顔を赤くした。
しかし隠そうとする様子は全くなく、チラ、と後ろを向いてプールの方を確認すると、
足を少しだけ広げて桐山が愛撫しやすいようにする。
夏休み中遊びまくっていた所為か、充の日焼け跡はくっきりとしていた。
日に焼けていない部分が焼けた肌に比べて白く見える分、その中央にそそり立つ褐色の雄の象徴がやけに逞しく見えた。
「ボスの言う通り、竜平や博は知っててボスが知らない俺ってのもあるけどさ、こんなにカチカチになったココは、
ボスしか知らないんだよ」
桐山に見せつけるように腰を突き出して、張り詰めたその部分を二、三度扱いた。
「竜平や博には悪いけど、俺にとっての特別はボスだから。ボスとしかこういう事しないから」
「充…」
充の言葉を聞いて、桐山は胸が痛くなるくらいキュウと締め付けられるのを感じた。
しかし、それは嫌な感じではなかった。
桐山は充の陰茎を大事そうに両手で掴むと、充の気持ちに応えるかのように何度もそこに唇で触れた。
桐山の唇が触れる度に手の中で充の陰茎がピクン、ピクンと反応する。
先端を口に含むと、プールの水のような味がした。
ツルツルした先端の表面を舌で撫でるように愛撫した後、全体にもプールの水と同じ味がしなくなるまで
何度も何度も舌を這わせた。
自分の分身に、頬擦りするように顔を近付けながら舌を這わせる桐山を上から見ていると、堪らなく興奮してくる。
更に下に移動した桐山が垂れ下がっている袋の方にも舌を這わせ始めると、充は耐え切れず声をあげた。
「ボス…はぁ…あ…」
生温かい褐色の袋に手を添えて、中の塊を舌で転がすようにする。
時々吸い付いたり、一つずつ塊を揉むように愛撫すると、先端の切れ込みからトロトロと先走りが滲み出て、
血管が浮かび上がっている側面を濡らしていった。
そろそろサオの方にもまた触れて欲しいだろうと思い、桐山は根元から少しずつ間隔を空けてチュッ、チュッと
側面に吸い付きながら先端に向かって上昇していった。
「あぁぁっ!!」
最後に先端の裏側だけ強めにチュウッと吸ってあげると、充はあまりの気持ち良さに耐え切れず大きな声を出してしまう。
声を出してしまった後、充は慌てて口を手で塞ぎ、周りをキョロキョロ見回した。
幸い誰にも気付かれなかったようだ。
桐山は追い打ちをかけるように、舌を出してチロチロと先端の裏側を擽るようにそっと舐めた。
「ソコッ…いい…先っぽの裏舐められるとすごい感じちゃうよっ!」
「ここがいいのかい?」
「うん…ボスだってソコ好きだろ? さっきいっぱい感じてたみたいだし」
「………」
充の一言に恥ずかしくなったのか、桐山は頬を赤く染めると拗ねたように充の陰茎に軽くカプ、と噛み付いた。
その刺激に充が体を震わせる。
そのまま根元まで充の陰茎を口に含むと、袋を手の平で撫でるように愛撫しながら、口内で脈打つそれに
ねっとりと舌を這わせた。
充は桐山の頭を両手で掴むと、荒い息を吐きながら目を閉じた。
桐山は小さい口で充の剛直を根元まで受け入れ、一生懸命愛撫する。
「なぁ、ボス。腰動かしてもいい?」
充が切なげな声で桐山に尋ねた。
桐山はそのままコクンと頷くと、充が腰を動かし易いように足首を掴んだ。
充は桐山の負担にならないように、ゆっくりと腰を動かし始める。
この行為は桐山をダッチワイフとかそういう道具に見立てているようで罪悪感を感じたが、
桐山の口の内壁に陰茎が擦れる感覚が好きでついお願いしてしまう。
最初は桐山を気遣ってゆっくりと動いていた充だったが、絶頂が近付いてくるにつれ余裕がなくなってきて腰の動きが早くなる。
少し辛かったが、それでも充に達して欲しくて堪える桐山。
「ボ…スゥ…も、イッちゃ…う…」
充の手がグッと桐山の頭を引き寄せた。
桐山も充の腰に手を回してギュッと抱き付き、陰茎を奥まで飲み込む。
「あぁー…イクッ…うぅっ…ぅっ…」
次の瞬間、充の先端の切れ込みから放出された大量の白濁液が桐山の口内を満たしていった。
充の腰に回された桐山の手に力が込められる。
充に抱きつきながら口内の白濁液を全て飲み込むと、湯の中に液を垂らさぬように充の陰茎を舌で拭いながら口を離した。
充はハァハァと荒い息を吐きながら呼吸を整えようとしている。
「おや?」
充の白濁液を全て飲み終えた桐山は、先程まで自分が愛撫していた充の股間を見て首を傾げた。
「どうしたの? ボス」
「射精したのに、萎えていない…」
充の陰茎は体積が減って全体的に小さくなったものの、相変わらず天を仰いだままだったのだ。
自分の元気の良さに、思わず苦笑してしまう充。
「俺のココ、ボスの中に入らないと元に戻らないみたいだ」
「…構わないよ」
桐山が湯の中から体を起こすと、股間が先程のように膨らんでいる。
お互い最後までしないと体の中の熱は治まりそうにない。
桐山を引き寄せスパの縁に手をつかせて自分は背後に回り込むと、桐山の水着を掴んでグイッと上に引っ張った。
「あっ…」
充に引っ張られた所為で水着が股間に食い込み、後方はTバックのようにされておしりが露にされる。
「あ…ボスのおしり、まだ赤くなったままだ…」
充は桐山のおしりに顔を近付けると、ウォータースライダーの摩擦で赤くなってしまった部分を労わるようにそっと撫でた。
くすぐったく感じるのか、桐山が身を捩らせる。
「唾つけとけば治るかな?」
舌を出して赤くなった部分をペロ、と舐めると、桐山は眉を顰めてビクンと跳ねた。
「ボス、ここ染みる?」
「ああ、少し…」
「ごめんね。ボスの白くて可愛いおしりがこんなに傷付いちゃった…」
傷が早く治るように想いを込めながら、充は左右の赤くなった部分をペロペロと舐めていった。
少し染みるが、それ以上の快楽を感じて体の内の熱が高まっていく。
桐山のおしりを唾液でベトベトにした充は、割れ目に食い込んでいた水着を横にずらし、埋もれている蕾を露にする。
物欲しそうにヒクヒクと蠢くそこに、おしりを舐めた時と同じように舌を這わせた。
入り口を何度も舌でなぞった後、指で押し広げて更に奥へと舌を侵入させる。
充の丁寧な愛撫によって、少しずつそこは充を受け入れられるように解れていった。
「そろそろいいかな。俺のもまたカチンカチンになっちゃった」
すっかり回復して硬くなった陰茎を桐山のおしりに擦り付ける。
「ま、待ってくれ充」
そのまま先端を蕾に当てがおうとした充を桐山が止めた。
「どうしたの?」
「この体勢では…したくない」
いつもは体位にケチつける事なく、充にされるがままになっていた桐山だが、
何が不満なのか後背位で一つになるのを拒否してきた。
「何で…俺、何かマズい事した?」
好き勝手やった所為で桐山の機嫌を損ねてしまったのかと充は焦った。
「いや、充は悪くない。でも、これだと充の顔が見れないから…」
「ボス…」
オロオロしていた充は途端に嬉しそうな顔になり、桐山を自分の方へ向かせた。
「俺も…ボスの顔見ながらしたい」
そう言って桐山の額に軽く口付けると、桐山の片足を掴んでゆっくりと持ち上げた。
「ボス、そのままちょっと我慢しててね」
充は手探りで桐山の蕾を探し当てると、水着を横にずらして自分を欲しがっているそこに先端を当てがった。
あくまでも水着を脱がせないまま行為を続けるつもりらしい。
そのまま桐山の体を引き寄せ、ゆっくりと挿入していく。
「あ…アァ…う…」
桐山は体を仰け反らせながら充を受け入れていった。
充の陰茎が根元まで桐山の中に収められ、二人の体が密着する。
「全部入ったよ…」
充は桐山を抱き締めると、繋がったまま湯の中に腰を下ろし、対面座位の体勢になる。
「これなら少しくらい激しく動いても、誰にも見付からないよ」
「そうだな…」
そのまま二人は口付けを交わすと、一緒に達する為に腰を動かし始めた。
「ふぁ…ん…ハッ…」
桐山の腰を両手で掴んで自分の方へ引き寄せながら、桐山の体を突き上げるように腰を動かす。
奥深くを何度も突き立てられ、ズン、ズン、と衝撃を受ける度に桐山の口から微かに悲鳴のような声が漏れる。
「今度はボスがいいように動いてみて」
耳元でそう囁くと、充は桐山が動き易いように腰から手を離した。
桐山は充の肩を両手で掴むと、最初は控え目に腰を前後に動かし始めた。
徐々に左右の動きも加え、円を描くように腰をくねらせる。
いつの間にか充の肩に置かれていた両手は首に回され、上半身がぴったりと密着する。
腹に押し当てられた桐山の股間は硬く、湯の中でもその部分が特に熱く感じる程になっていた。
腹で桐山の股間を擦るように上半身も一緒に動かすと、耳元に聞こえる桐山の嬌声が更に強くなった。
股間が充の筋肉がついて硬い腹に擦れる感触が気に入ったのか、桐山は股間を充の腹に擦り付けるように腰を動かし始める。
桐山の動きを補助するように、背後に手を回しておしりを両手で掴むと、腹を密着させたまま陰茎を抜き挿しするように
桐山の体を上下に動かした。
湯の中なので、いつもより簡単に桐山の体が持ち上がる。
「あ、あ、ふ…っく…」
桐山は自分の中に充の陰茎が出入りする感覚に身を震わせた。
同時に陰茎と蕾に刺激を与えられ、桐山の快楽が絶頂に向かってどんどんと登り詰めていく。
あまりの気持ち良さに涙目になっている桐山の目尻に口付けると、充は桐山の奥の一番感じる部分を突き立てるように
激しく腰を動かし始めた。
「ん…ふっ…くぅっ…ひ…ぃっ」
激しく突き立てられ、桐山が悲鳴のような声をあげる。
充の首に回された手には更に力が込められる。
「ボス…ボ…ス…一緒に…イコ…」
「あ…あぁ…いっ…しょに…」
切れ切れに言うと、桐山も何とか力を振り絞って充に合わせて腰を動かし始めた。
強く抱き合ったまま、二人一緒に登り詰めていく。
「あ・あ・あ…みつ…やっ! ぅ…ふぅ…んんっ!!」
充の先端に一番弱い部分を突かれ、先に桐山が達した。
水着を着用したままなので、先端から放たれた白濁液が水着の内側から跳ね返って桐山の陰茎全体を汚していった。
陰茎全体に生温かい白濁液が伝っていく妙な感触に、桐山はブルブルと体を震わせる。
「ボス…待っ…て…一緒に! あっ…イクッ! んぁっ…ハッ…くぅ…ん…ボスッ!!」
桐山の肉壁に締め付けられ、少し遅れて充も絶頂に達した。
充の陰茎の先端から勢い良く飛び出た白濁液が桐山の直腸を満たしていく。
湯の中なのに、自らの先端と下腹の中にお湯以上の熱を感じる。
桐山が絶頂の余韻に浸りうっとりとした表情になっている一方で、全てを出し尽くして我に返った充は、
改めて自分が欲望を抑え切れなかった事を後悔していた。
しばらくして、落ち着いた桐山が顔を上げて充を見つめる。
「何でそんな顔をしているんだ?」
「え…そんな顔って?」
「随分と情けない顔をしている」
「だって…所構わず欲情して、二人きりになるとエッチしてばっかり…ボスの事、体目当てだと思ってる訳じゃないのに…」
少しずつ罪悪感が沸いてきたのか、充の表情が暗くなる。
「何をそんなに気にしているのか知らないが、俺は悪い気はしなかったよ」
「そう言って貰えると、少しは気が楽だけど…」
桐山の言葉を聞いても、充の表情はあまり晴れなかった。
そんな充の表情を不思議そうに見ていた桐山だったが、いきなり充の顔を両手で掴むと、そのままチュッと充に口付けた。
「ボ、ボス!?」
突然の桐山の行動に、充は目を見開いて驚きを隠せないようだった。
「今、凄く充にキスしたいと思ったんだ。いけなかったかな?」
無意識ではあるが、桐山なりに充を安心させたかったのだろう。
桐山の心遣いに、充は自分の心が救われたような気がした。
「いけなくないよ…ありがと、ボス」
充はいつもの笑顔を見せて桐山を強く抱き締めた。
桐山は充の胸に顔を埋めながら、こめかみがじんじんと疼くのを感じていた。

夕陽が街を照らす頃、二人は城岩町へ向かう電車に揺られていた。
一番端だという事もあるのか、二人が乗っている車両には他に誰もいない。
誰もいないのをいい事に、二人はぴったりとくっついて座席に腰を下ろしていた。
桐山は疲れたのか、充の肩に頭を凭れさせて小さな寝息を立てている。
あの後、桐山の中に放出した白濁液を処理する為に併設されている大浴場へ向かったのだが、
そこは想像していた以上に広く、ジャグジーや電気風呂、ハーブ湯などいろいろな風呂があり、
体をキレイに洗い流した後二人で全ての風呂をハシゴして回っていたのでこんな時間になってしまったのだ。
明日はちゃんと学校に行かなくては、と思っているのでもう少し早い時間に帰宅するつもりだったが、
二人で入る風呂はとても楽しかったので後悔はしていない。
「ボス、今日はホント楽しかったよ。付き合ってくれてありがとな」
気持ち良さそうに寝ている桐山の頭を優しく撫でながら、充は桐山を起さないように小さな声で呟いた。
「エッチしないって決めてたのに、結局エッチしちゃったけど…」
プールでエッチしてしまった事を思い出して苦笑いする。
「今年の夏はもう終わりだけど、来年の夏はもっといっぱい会えるようにして、いろんなトコに遊びに行って、
二人の思い出たくさん作ろうな。俺、もっとボスと一緒にいたい。そんで、ボスの知らない事たくさん教えてあげたい。
中学卒業して、高校行って、大人になっても、ずっとずっとボスと一緒にいたいよ」
そう言って、桐山が起きないようにそっと触れるだけのキスをした。
「でも、もし離れる事があっても、どんな事が起こっても、俺の気持ちは変わらないからね。
ずっとずっとボスを想い続けるから。それは絶対だよ。ボス…愛してる」
言い終えて桐山の顔を覗き込むと、何だか幸せそうな顔をしていた。
充はその寝顔を見て満足そうな笑みを浮かべると、桐山の頭に自分の頭を凭れさせた。
目を閉じて、充も束の間の眠りの世界へと落ちていく。

次の夏を迎える事が出来ない運命だと知らない二人を、夕陽がいつまでも照らしていた。

+ + + + + +

19000HITゲッターの桃吉さんからのリクエスト「プール関係の場所での沼桐」いかがでしたでしょうか?
リクを受けてから書き上げるまでにかなり時間がかかってしまい、桃吉さんには申し訳ない気持ちでいっぱいです。
しかも、何だか暗いオチになってしまったし、「プール関係の場所」というリクだったにも拘らずエッチしてる場所はスパだったりと、桃吉さんのご希望に沿えているかどうかかなり不安なのですが、楽しんでいただけたら嬉しいです。
「プールの端にミニスパ」は東京サマーランド、このプール全体のイメージはとしまえんを思い出しながら書きました。
プール関係の場所、という事で、エッチシーンはもちろんですが、プールで遊ぶ充とボスにも重点を置いてみました。
プールで遊んでいるシーンが上手く書けなくて手間取ったのですが、読み手さんに楽しんでいる二人の気持ちが
上手く伝わってるといいなぁ…
ちなみに「ウォータースライダーで半ケツ状態」は実話だったりします。周りに人がいなくて良かった…(汗)
食事のシーンはおもいっきり自分の趣味が入ってます(笑)
私の場合はフランクフルトがアメリカンドッグに変わるんですが、プールで飲食と言えばフローズンは外せないのですよ!
フローズン・メロン味&コーラ味、知らない人はいない…よね?(←自信なさ気)
知らない人がいた時の為に一応説明っぽいセリフは入れたんですが、アレで上手く通じてるかな。
「プール納めは9月だったとしても、第一日曜まではやってるんじゃないの?」とか
「いくらなんでも誰かに気付かれちゃうんじゃないの?」とか、その他いろいろ突っ込みドコロがたくさんある話ですが、
その辺は深く考えず二人のラブラブっぷりを堪能していただければありがたいです。
桃吉さん、キリリクどうもありがとうございました。アップが遅くなって本当に申し訳ありません!(汗)



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