ちょっとした油断が命取りだった。
あいつらの言う様に、やっぱり俺はボスがいないとダメなんだろうか…
悔しかった。
悲しかった。
ボスの傍にいるのに相応しい男になりたいと思っているのに…


Purification


5時間目の授業が終わり、早々に帰宅する者、部活に行く者、教室に残って友達とお喋りする者、皆それぞれ思い思いの
放課後を過ごしていた。
「笹川、黒長、充がどこに行ったか知らないか?」
教師に呼ばれ職員室に行っていた桐山は教室の中に充の姿がない事に気付き、帰りにどこに遊びに行こうか相談している
二人に声をかけた。
ちなみにヅキは部室で着替える三村を覗きに行っていて不在だった。
「えっ? 充? ト、トイレにでも行ってるんじゃないかな」
そう答えた博だが、目が泳いでいてどこか不自然だった。
「あ、鞄ないからもう帰ったんじゃねーの?」
博に疑いの眼差しを向ける桐山に、まるでフォローするかのように竜平が口を挟む。
「確かに鞄がないな…」
充のぺたんこに潰れて中身が殆ど入っていない学生鞄が机からなくなっている。
桐山は腑に落ちなかった。
いつもなら、必ず自分と一緒に帰ろうとする充が、何も言わずに先に帰ったりするだろうか。
以前「図書室で読みたい本があるから先に帰ってもいいぞ」と言ったのに、「それなら待ってるよ」と、本を読む自分をニコニコ
見つめながらずっと待っていた、あの充が。
「黒長、お前何か知っているだろう」
「お、俺何も知らないよっ!」
「だったら何で俺と目を合わさないんだ?」
「あ…」
桐山に指摘され、博は困惑した顔をして俯いてしまう。
「お前達、隠している事があるなら教えろ」
「んなモンねーよ」
「うん…」
シラを切り通そうとする二人を、桐山はキッと睨みつける。
「………実は」
「りゅ、竜平!」
開きかけた竜平の口を博が慌てて押さえつけた。
「充に口止めされてるのに、言っちゃマズいだろー!?」
桐山に聞こえないように、小声で竜平を諫める。
「バカ! 充も怒ると怖いけど、ボスの方が怒らせたらもっと怖いだろーが!!」
博の手を引き剥がし、竜平が怒鳴りつけた。
「知っている事、全部話してくれないか?」
言い合いしている二人に桐山が冷たい声で口を挟む。
「充…■△中の奴らに言われたんだよ。『沼井は桐山がいないと何も出来ない。桐山がいなくても強いと証明したければ、
お前一人だけで勝負しに来い』って」
博は仕方なく隠していた事を桐山に話した。
「充の奴、『ボスには絶対言うなよ! お前らもついて来たら許さないからな!!』って言って、授業終わってボスが呼び出し
食らってる間に一人で行っちまったんだ」
竜平も博の後に続いて話し始めた。
「それで、充はどこに行ったんだ」
「さぁ…場所までは…」
「充、教えてくんなかったもんな」
二人の言葉が信用出来ないのか、桐山は続きを催促するかのように二人をじーっと見つめる。
「ホントに場所までは知らないんだよ!」
「念の為聞いとこうと思ったんだけどよ、それだけは教えてくれなかったんだ」
「充、プライド傷付けられてかなり怒ってたから、絶対に一人だけでケリつけるつもりみたいだし…」
「そうか…」
そう呟くと、桐山は少し考えた後帰り支度を始めた。
「ボス、充を探しに行くの?」
「行くなら俺達も付き合うぜ」
「いや、探しには行かない。俺はこのまままっすぐ帰るよ。場所が分からないのでは探しようもない」
鞄に荷物を詰め終えた桐山は、そう言うとさっさと教室を出て行ってしまった。
「…ボスって結構クールだね」
「そうだな。てっきり探しに行くのかと思った。充もあれだけ普段ボスに尽くしてるのに可哀相だな」
「どうする? 俺達だけでも探しに行く?」
「俺達が行っても邪魔になるだけだし、これ以上充との約束破ったら後がこえーよ」
「そうだね。それに充なら大丈夫だよ、きっと」
多少不安を感じていたが、二人は充の強さを信じる事にした。

一方、桐山は教室を出てからずっと心の中にもやもやした物を感じていた。
何かあってもそんな挑発に乗った充が悪い。
そう思っているハズなのに、何故か充の事ばかり考えてしまう。
「くっ…」
急に左のこめかみが疼き、桐山はそこを押さえた。
「充…」
何かに執着した事なんて今まで一度もなかったのに、充がいないだけでこんなにイライラした気分になるのは何故だろう。
気が付くと、充を探す為に当てもなく走り出していた。

陸橋の下、周りから死角になっている所に四人の男がいた。
その内の一人は後頭部を押さえ、地面に横たわっている。
「一人でも勝てるとか大口叩いといて、大した事ねーじゃん」
「うぅ…」

充が呼び出された場所に着くと、相手は三人いた。
タイマンではない事は予想済みだったので、充は怯む事なく相手に挑んだ。
桐山には敵わないが、充も相当の実力を持つ人間だったので勝負は見えたかのように思えた。
しかし、相手の弱さに少し油断した充は隙を作ってしまったのだ。
がら空きの背後から、何か固い物で強く後頭部を殴られ、思わず地に膝を付いてしまう。
慌てて立ち上がろうとしたが、頭の中に手を突っ込まれてぐちゃぐちゃに掻き回されたような気分で、視界が歪みぐらぐらする。

この後、充は三人に寄ってたかって好き放題殴る蹴るの暴行を加えられたのだ。

「お前の背中を守ってくれる桐山は、今日はいねーんだよ」
「やっぱり桐山がいないと何にも出来ないんだね」
「クソ…」
相手が複数とはいえ、分かっていて勝負を挑んだのだし、例え卑怯な手を使われたのだとしても結果が出てしまった以上
充は反論出来なかった。
夢中になると背後に隙が出来易い充を、いつもは桐山がフォローしてきた。
その事を桐山に指摘された事もあったのに、それを直せなかった自分に非があるのだ。
情けない自分に腹が立って仕方がなかった。
一人でも大丈夫だと思ったのに。
桐山を信頼するあまり、自分の背中は桐山が守ってくれると無意識の内に思うようになってしまっていたのだろう。
「そうそう、桐山と言えばさ、俺ちょっと小耳に挟んだ事があるんだよね」
「何を?」
充をタコ殴りにして気が済んだのか、他校の不良達は一服しながら雑談を始めた。
「桐山とこいつ、デキてるらしいよ」
「マジかよ!? 確かにいつも金魚のフンみたいにくっついてたモンな」
「おい、どうなんだよ! お前らおホモだちなのか?」
三人がゲラゲラと下品に笑う。
充は今の話を聞いて青ざめていた。
他校生の言う通り、桐山と充には体の関係があった。
恋人と呼べるような雰囲気ではないけれど。
どこからそんな話が洩れたのだろう。
まだ痛む頭を押さえながら、充はどう誤魔化そうか必死に考えていた。
「おホモだちじゃなくて、単なる肉便所なんじゃねーの?」
「愛しのボスの性処理の為に、自ら進んでケツ差し出してるってか?」
「うるさい! 黙れ!!」
自分でも気にしている部分を突かれ、充は思わず怒鳴っていた。
桐山が単にヤリたいだけで自分を抱くのか、少しでも好意を持って体を重ねてくるのか、充はどちらが本当なのか
自信がなかった。
いつもは考えないようにしていた。
桐山が自分に少しでも好意を持ってくれているのだと信じたかった。
それを、他人に土足で踏み込まれたのが悔しかった。
「おいおい、こいつマジで怒ってるよ」
「何だよ。桐山とお前、本当にデキてんの?」
「そんな事、お前らには関係ねーだろ!!」
「だったら確かめてみよーぜ。おい、お前ら。ちょっとこいつ押さえてろ」
「オッケー」
「面白くなってきたな」
「な…や、止めろっ!」
充は慌てて抵抗するが、二人掛りでうつ伏せに押さえつけられ、身動き取れなくされてしまう。
残りの一人が充のベルトを外し、ズボンに手をかけそのまま下着ごと一気にずり下ろした。
「止めろってば!!」
おしり丸出し状態にされ、顔を真っ赤にして充がもがく。
「おー、いいケツしてんじゃん」
そう言って、充がもがく度に上下に揺れるおしりをペチペチ叩いた。
「もっと奥まで見せてもらおうか…」
「やっ…」
双丘を左右に押し広げられ、そこに埋もれていた茶褐色の窄まりが外気に晒される。
桐山にしか見せた事のない秘密の場所を暴かれ、恥ずかしさと悔しさで充の顔はますます赤くなった。
「何こいつ。ケツの穴ヒクヒクしてるぜ」
「見られてコーフンしてるんじゃねーの?」
「へぇ、見られてコーフンするなんて変態だね」
「コーフンなんかしてねぇよ!」
「さっきから金魚の口みたいにパクパクしてんのにか?」
「ウソはいけないなぁ、沼井クン」
「パクパクしてるなら、エサあげてみたらどーよ?」
「なっ…」
「おっ、それいいな。どれどれ…」
背後にいた男が充のおしりに手を伸ばす。
「や、止め…ひぎぃ!」
いきなり指を挿入され、充の哀願は途中で悲鳴に変わった。
男の指が中でぐにぐにと動く。
ただ闇雲に掻き回すだけで少しも気持ち良くなかった。
桐山以外の人間の指が体内に入っていると思うだけで吐き気が込み上げてくる。
「随分と解れてんなぁ…こりゃ使用済み決定だな」
「かなり桐山に調教されたみたいだね」
「だって桐山の犬だもんよ。なぁ?」
「むぐっ・・・ぅ…も、止め…」
嫌な予感がして必死に体を捩ったが、三人がかりで押さえ付けられている上、秘部に指を挿入されている状態では
どうにもならなかった。
「これならすぐ挿れても大丈夫そうだな」
「何? ホントにヤッちゃうの?」
「せっかくだから俺達の性処理もして貰おうぜ」
嫌な予感が的中し、充の顔が青ざめていく。
「頼む! それだけは止めてくれ! 俺の事殴りたいなら好きなだけ殴っていいから!!」
プライドも何も捨てて充は叫んだ。
桐山以外の人間にこれ以上の事をされるのはどうしても避けたかった。
犯されるくらいなら、殴られる苦痛にずっと耐える方が何百倍もマシだった。
「腹減ってお口パクパクしてる沼井クンにエサをあげようって言ってんだから遠慮するなって」
「今日からお前は俺達の犬なんだよ」
「桐山の代わりにたっぷりと可愛がってやるよ」
背後でカチャカチャとベルトを外す音が聞こえる。
こいつら本気だ!
そう思って最後の力を振り絞って逃げ出そうと試みたが、やはり三人相手では無理な話だった。
もう一度双丘が左右に押し広げられ、いきり立った男のペニスが秘部に当てがわれる。
「止め…ろぉっ…やぁぁー!!」
制止の声も無視され、そのまま一気に貫かれた。
濡らしもせずに突き立てられた所為か、秘部が少し切れてしまったようだ。
秘部の周囲がじんじんと鈍い痛みを放っている。
「ひっ…うっ…ひぎ…ぃ、あ、ぐっ…」
息つく間もなく腰を動かされ、充は呻き声を上げた。
「スゲェ…ヘタな女より気持ちいいぜ、こりゃ」
「なら早く代わってくれよ。俺もヤリたい」
「俺も俺もー。ん? 誰か携帯鳴ってるよ?」
どこか近くで携帯が鳴っている音が聞こえる。
聞き覚えのある曲だった。
「ボ、ボス!?」
思わず叫んでしまった。
桐山からかかってきた時に鳴るように設定している着信音だったからだ。
「ふーん、桐山からなんだ。えっと…これ?」
充を押さえていた一人が学ランのポケットを漁り、充の携帯を取り出した。
「か、返せ!」
「ヤダね。もしもし…」
携帯を手にした男は何を思ったのか、充の代わりに電話に出た。
『…充じゃないな? 誰だ』
やはり電話は桐山からだった。
携帯の持ち主とはかけ離れた声が聞こえ、低く冷たい声でそう言った。
「沼井クンの友達でーすv 今沼井クンと楽しく遊んでるんでぇ、用があるんなら後にして貰えます?」
『ふざけるな。充はどうした! お前充に何をした!!』
「何って…ナニかな?」
『!?』
「さすがの桐山クンも驚いたみたいだね。沼井クンも喜んでるみたいだけど。そんなに言うなら代わろうか?」
その男はニヤニヤ笑いながら充の口元に携帯を突き付ける。
充は今自分が犯されている事を桐山に悟られまいと口を固く閉ざした。
それまで傍観していた男が充の鼻を摘む。
それでも口を開けぬようにしばらく我慢していたが、息が出来ない上に後ろから激しく突き立てられ、堪え切れず
口を開けてしまう。
「やぁっ…ボ、ボス…んっ…ごめん、俺…ボス、来ちゃダメ…くぅんっ…」
犯されていると丸分かりな声で電話の向こうの桐山に話しかける。
これ以上桐山に迷惑はかけたくなかったし、自分のこんな姿を見られるのは避けたかった。
「と、いうワケなんで、桐山クンの分まで沼井クンの事可愛がってあげるんでご心配なく。バイバーイv」
携帯を持っていた男は一方的に言いたい事だけ言って電話を切った。
「桐山クンにバレちゃったねー」
「でも、ここがどこかなんて今の電話じゃ分かんねーし、来るなって言ったんだから来ないんじゃねーの?」
「いいじゃねーか、どっちでも。これからまだまだ楽しませて貰う事に変わりはねーんだからよ。おい、そろそろ出すぞ!」
「ヤダ…もうヤダ…」
「溜まってるからいっぱい出るぞ…うぅっ!!」
男が呻くと同時に、充の中に熱い汚液が流れ込む。
中までも桐山以外の人間に汚され、目の前が真っ暗になった。
「あれ、沼井クン泣いてるよ?」
「あんまり良くて嬉し泣きしてんじゃねーの?」
「泣いてる暇なんかねぇぞ。俺達の袋の中、カラッポになるまで遊ばせて貰うからな」
「俺達の精液の味、忘れられなくしてあげるよ」
三人が下品な笑い声を上げる。
絶望に打ちひしがれた充には、その声すら届いていなかった。

あれからどのくらい時間が経ったのだろう。
あの後三人に代わるがわる犯され、何度汚液を体に受けたか、もう数えられなくなっていた。

もうどうでもいい。
とにかく早く終わらせてくれ。

充が半ば諦めかけていた時、異変が起きた。
「うわっ!?」
「どうした? げっ…き、桐山…」
「何でここが…」
先程まで自分を犯していた男達の呻き声が朦朧とした意識の中、微かに耳に届いた。
「充」
「!?」
聞き覚えのある声だけがハッキリと耳に届き、充はゆっくりと目を開けた。
「ボ…ス…?」
目が霞んでよく見えなかった。
ゴシゴシと目を擦ってもう一度声のした方を見ると、そこには桐山が立っていた。
ほぼ全裸に近い格好にされ、三人分の汚液に塗れた充を目にして、その表情はいつも以上に凍り付いているようだった。
「ボス…どうしてここが…」
「電話の向こうから電車の音と川の流れる音が聞こえてここしかないと思った」
「そっか…」
これで三人に輪姦されなくて済むとホッとした反面、今の状態を一番見られたくない人が目の前に現れ、複雑な気分だった。
何か言わなくては、と思うが頭が上手く働かない。
充が黙って下を向いている間に、桐山は持っていたハンカチで充の体の汚れをさっと拭き取ってあげた。
「充、早く服を着ろ。行くぞ」
「う、うん…」
いつまでも全裸に近い格好でいる訳にはいかないので、充はあちこちに散乱した服を掻き集め、急いでそれを着た。
「行くぞ」
服を着終えた充の腕を掴み、桐山は足早に歩き始める。
「ま、待ってよ、ボス…」
辺りを見回すと、三人組がだらしなく伸びていた。
恐らく桐山がやったのだろう。
「何をしてる。早く行くぞ」
「う、うん…」
充は桐山に急かされ、その場を後にした。
陸橋から離れた後も桐山は何も言わず、充の腕を引っ張ったまま早足で歩いていた。
「ボス…どこ行くの?」
「いいから来い」
「うん…」
桐山は酷く怒っているようで、充はただ黙ってついていくしかなかった。
しばらく歩いていると、繁華街の裏通りに辿り着く。
「こっちだ。来い」
「えっ…そ、そこって…」
桐山がラブホテルに入ろうとしているのを知って、充は思わず足を止めてしまう。
「何でそんなトコ…」
「そんな汚れた体のままで家に帰る気か? ここで体をキレイにしていけ」
「あ…そう…だね」
シャワーだけならアジトでも浴びれるが、もしかしたら竜平達がいるかもしれないし、陸橋からはアジトは少し離れていた。
桐山は気を利かせて、アジトより近くにあるこのラブホテルを選んだのだろう。
確かにこんな状態で家に帰る訳にはいかない。
充は桐山と共にそのラブホテルに入っていった。
そこは以前利用した事がある、入ってから出るまで誰とも顔を合わせずに済むラブホテルだったので、男同士でも簡単に
入れるのだった。
桐山はルームパネルで適当な部屋を選ぶと、キーを取ってエレベーターに乗り込む。
部屋に着いてカギを開け、中に入ると桐山は手にしていた充と自分の鞄をソファーの上に放り投げた。
「さっさと服を脱げ」
「う、うん…」
充は急いで脱衣所に向かい、さっき着直したばかりの服を脱いで全裸になった。
バスルームの扉に手をかけようとすると桐山が現れ、充の代わりに扉をバッと開けると、充の体を中に突き飛ばした。
思い切り突き飛ばされ、充は転倒してしまう。
「イテテテ…」
ぶつけた所を擦りながら充が起き上がろうとすると、何故か桐山がバスルームの中に入ってきてシャワーを手にしていた。
「ボス?」
桐山は何も言わず蛇口を捻ると、シャワーのお湯を容赦なく充にかけたのだった。
「わっ!? ちょ…ボス、熱いよっ!!」
火傷する程の熱さではなかったが、いきなり熱めのお湯を全身にかけられ充は叫んだ。
それでも桐山はしばらく充にシャワーをかけ続けた。
充がお湯の熱さに慣れてきた頃、桐山はシャワーを止めた。
そしてシャワーを投げ捨てると、スポンジにボディソープを染み込ませ、横たわっている充に馬乗りになった。
「あ、ボス…体なら自分で…」
「うるさい、黙れ」
充の言葉を遮って冷たく言い放つと、手にしていたスポンジで充の鎖骨辺りをゴシゴシと擦り始めた。
「イタッ! 痛いよボス!」
「いいから黙ってろ!」
まるでこびり付いた汚れを落とそうとしてるかのように力いっぱい擦る桐山。
「ボス、痛いってば! 何でこんな事するんだよ!!」
「お前の体があんな奴等の手垢や精液塗れになっているかと思うと、何故だか分からないがイライラするんだ!」
桐山が珍しく(もしかしたら初めてかもしれない)怒鳴り声を上げる。
怒鳴り声を上げてハッと我に返ったらしい。
目の前の充がポロポロと涙を流している事にその時初めて気付いた。
「あ…済まない…」
桐山はそう言って充の上から退いた。
「頭に血が昇っていたようだ…悪かった。自分で洗えるか?」
充は何も言わず首を縦に振った。
「向こうの部屋で待っている…お前はゆっくり入っているといい」
桐山は申し訳なさそうな顔をして、バスルームから出て行った。
充はしばらく呆然としていたが、ヨロヨロと立ち上がると桐山が投げ捨てたシャワーを拾い、蛇口を捻ってお湯を出した。
ちょうどいい温度に調節して体にかける。
桐山が強く擦った所がピリッと痛んだ。
桐山があんなに感情を露にするのは初めてだった。
あれは弱い自分に対して怒っているのだろうか。
それとも、自分が他の人間に犯された事に少なからずショックを受けているのだろうか。
分からなかった。
桐山に少しでも愛されている自信がなかった。
秘部の中から、先程散々中出しされ、三人の精液が入り混じった物が逆流してきて太股を伝う。
頭の中がグチャグチャになって、シャワーを浴びながら充はまたポロポロと涙を零した。
少し泣いて落ち着いた後、充は念入りに体中をキレイにした。
秘部の中も、指を入れて三人分の汚液を全て掻き出した。
充が体をキレイにしてバスルームから出ると、脱衣所に大きなバスタオルとバスローブが置かれていた。
恐らく桐山が用意しておいてくれたのだろう。
フロントで購入したのか、真新しい下着(充がいつも穿いているボクサーパンツと似た物だった。桐山なりに気を利かせて
くれたのかもしれない)も用意してあった。
バスタオルで全身をよく拭いてバスローブを羽織る。
ラブホテルのバスローブなので丈が短いのが気になったが、学ランは汚れてしまっているし、他に着る物がないのだから
仕方がない。
裾を気にしつつ部屋の方へ行くと、学ランだけ脱いだ桐山がベッドにうつ伏せになっていた。
充がベッドの端に腰を下ろすと、その重みでベッドが軋み、桐山が顔を上げる。
ゆっくりと体を起こすと、桐山も充の隣に腰を下ろした。
お互い沈黙したまま、重苦しい空気が流れる。
充は桐山の顔がまともに見られず、ずっと下を向いたままだった。
自業自得とはいえ、桐山以外の男に犯され、それを桐山に助けて貰ったのだ。
情けないやら恥ずかしいやらで、今すぐこの場から消えてなくなりたかった。
「さっきは…すまなかった」
先に沈黙を破ったのは桐山だった。
独り言の様にポツリと言った。
「ボスが謝る事なんかないよ! 俺の方こそ…ごめん。ボスにまた助けられちゃったね。俺、ホント情けないね」
ジワリ、と涙が滲んでくる。
「俺、一人でも大丈夫だと思って…でもダメだった…こんな弱っちい俺、ボスの隣にいる資格なんかないね」
今まで抑えていたものが込み上げてきて、ポロポロと涙が零れた。
「泣くな…充は悪くない。それに、俺は充が俺の隣にいる資格がないとは思わない」
充の頬を伝う涙を指で拭いながら、桐山は出来るだけ優しい声でそう言った。
「だって…俺、こんなに弱いんだよ? プライドばっか高くて意地張って一人で喧嘩しに行って…負けちゃって。
それで…ボス以外の奴等に…あんな事…」
桐山が拭った端から新たな涙が零れ落ちて充の頬を濡らす。
「いいから、もう泣くな!」
いつまで経っても泣き止まない充を抱き締め、自分の胸に充の顔を埋めさせた。
「最初はお前を探すつもりはなかった。負けても挑発に乗ったお前が悪いと思っていた」
桐山の言葉に充は顔を曇らせる。
「でも…お前の事が気になって仕方がなかった。何故だかよく分からないが。気付いたらお前の事を探していた」
後に続いた意外な言葉に驚いて顔を上げると、桐山が真剣な眼差しでこちらを見つめていた。
「多分、お前が隣にいないのが嫌だと思ったのかもしれない」
「ホント? ホントに? 俺、これからもボスの隣にいていいの?」
「ああ。何だかお前が一緒でないと調子が狂う」
「ボス…」
充は嬉しくて堪らなくて、桐山にギュッと抱き付きその広い胸にもう一度顔を埋めた。
そんな充をあやす様に、桐山は何度も充の頭を撫でる。
「ねぇ、ボス…一つお願いしてもいいかな」
「何だい?」
「俺を…抱いて欲しいんだ」
目に涙をいっぱい溜めたまま、まっすぐな瞳で充は桐山を見つめた。
そのまっすぐで綺麗な瞳に思わず見入ってしまう。
「………やっぱイヤだよな。変な事言ってごめん」
桐山が沈黙しているのを拒否と受け取った充は酷く淋しそうな顔で俯いた。
「俺の体…他の奴等に散々汚されちまったから…そんな汚い体、抱きたくないよな。ごめん、今の忘れて。
俺、ボスの隣にいさせて貰えるだけで十分だから」
「いや、抱くのは構わないよ」
「ムリすんなよ。返事に困ってたクセに」
「返事に困っていた訳ではない。充の目がとても綺麗でつい見入ってしまった」
「な、何言ってんだよ! そんなウソついて誤魔化すなよ!!」
目が綺麗と言われたのが照れ臭かったのか、充は顔を赤くして目を逸らした。
「嘘ではないし、本当に抱くのは構わない。でも、体の方は大丈夫なのか? 大分無茶な事をされたようだが…」
「うん。体の方は大丈夫。でも、何か気持ち悪いんだ」
「気持ちが悪いなら無理はしない方がいい」
桐山の心配してくれる気持ちを嬉しく思いつつも、首を横に振ってそれを否定した。
「あいつらの感触がまだ体に残ってる感じで…それで気持ち悪いんだ。今シャワー浴びて、いっぱいスポンジで擦ってキレイに
したハズなのに、まだあいつらの手の感触とか匂いとか体中に残ってるような気がして…」
充の言葉を桐山は黙って聞いていた。
「だから、ボスの手の感触を味わいたい。俺の体中ボスの匂いでいっぱいにして欲しい。ボスをいっぱい感じて、あいつらに
された事全部忘れたいんだ。ボス、お願い。抱いて…くれないかな」
「分かった…」
必死で縋る様に自分を見つめる充を強く抱き締める。
「その代わり、辛かったり、したくなくなったらちゃんと言え。充に無理はさせたくない」
「うん…」
桐山に心配かけまいと、充はニッコリ微笑んでみせる。
お互いに体を寄せ合い、どちらからともなく唇を重ねた。
いつもならすぐに舌を挿入してくる桐山が、啄む様なバードキスを繰り返す。
こんなキスをしたのは初めてで、充は目を閉じてその心地良さを味わった。
何度か桐山の唇を感じた後、ふわりと体が浮いてそのままベッドに横たわらせられる。
お互い体を横たえた後も、桐山はバードキスを繰り返していた。
気を遣ってくれているのだろうか。
いつもの激しいキスも嫌いじゃないけれど、今はこの優しいキスが桐山の胸の内を表しているようで嬉しかった。
桐山のキスは唇だけでなく、頬や瞼、額や首筋にまで広がっていった。
それと同時にバスローブの胸元から桐山の手が滑り込んでくる。
手の平で胸全体を撫で回す。
「あ…ボスの手の平だ…」
味わい慣れた手の平の感触を胸に受けて、充はホッと溜め息をつく。
やはり自分はこの手でなければダメだ。
そう思いながら愛しい人の手の温もりを感じていた。
充の胸を撫でていた桐山の手は、やがて二ヶ所の硬度を増した一点を感じ取り、そこを指先でそっと撫でた。
「ひゃっ・・・ぁう…」
胸の中でも特に敏感な部分を撫でられ、充の体がピクッと跳ねる。
その敏感な場所を指で弄びながら、桐山は深めに口付けてきた。
充の方から少し口を開き、もっと深い口付けを催促する。
誘われるように桐山は充の口内に舌を挿入し、ゆっくり擦り合わせるように舌を絡ませた。
桐山の指の腹が充の胸の突起を刺激する度に、充の舌がビクッと震えていた。
しばらく舌を擦り合わせた後、名残惜しそうに唇を離すと、桐山は体を起こして充のバスローブの帯を解いた。
前を開いて充の肌を露出させる。
すぐに先程自分がスポンジで強く擦った所為で赤くなってしまった部分が目に入る。
桐山は申し訳なさそうな表情でその部分を二、三度撫でると、唇でそっと触れた。
まだ少しヒリヒリするのか、充が眉を顰める。
「ここ、痛かったか?」
「ん…ちょっとだけ。でも平気だよ」
「済まなかったな」
「ううん。ボスが俺の汚れた体をキレイにしてくれようとしたの、凄く嬉しかったからいいんだ」
「そうか…」
追い打ちをかけるような事をした筈なのに、それを嬉しいと言う充の気持ちが今一つ理解出来なかったが、自分のした事を怒っていないという事だけは理解出来たので少し安心した。
舌を出して、赤くなった部分をペロリと舐める。
充はまた眉を顰めながらも吐息を漏らしていた。
今度は口をつけて、少し強めに吸い上げた。
桐山が唇を離すと、一ヶ所だけ点の様に一際赤くなっている部分が現れる。
そのまま桐山は鎖骨や胸辺りにまんべんなく朱の点を散りばめていった。
普段は跡が残るような事をすると充が酷く怒るのでやらないようにしていたのだが、今日は何故か怒られても構わないから、
充の体に跡をつけたいと思った。
充の方も、何故か今日は怒らなかった。
むしろ、ちゅ、と吸い上げられる度に溜め息混じりの声を上げていた。
「怒らないんだな。こんなにたくさん跡をつけているのに」
「…今は何だか印、たくさんつけられたい気分なんだ。だからもっとつけて。俺の体はボスだけの物だって印、いっぱいつけて」
充に潤んだ目で哀願され、桐山は無言で頷くと再び充の体に印をつけた。
印が腰の辺りにまで散りばめられると、そのまま更に下方へと桐山が移動するのを期待していたのだが、桐山はその期待を
裏切るように充の体を起こし、肌蹴ていたバスローブを剥ぎ取るとうつ伏せに寝かせた。
うつ伏せにされた瞬間、先程の嫌な記憶が頭の中に甦ったのか、充の体が硬直する。
そしてシーツをギュッと掴んでブルブル震え始めた。
「充、大丈夫だ。今お前に触れているのは俺なのだから」
震える充に覆い被さって体を密着させると、充の手を握りながら耳元で囁く。
「うん…」
桐山の声と温もりを感じて落ち着いたのか、充の体の震えが治まっていった。
震えが完全に治まるのを確認してから、桐山は充の手を握ったまま今度は背中に朱の点を散りばめていく。
まるで唇で充の体中全てを清めているようだった。
充も、唇が触れた部分の汚れが桐山によって浄化されているように感じていた。
しかし、朱の点が腰の辺りまで広まった頃、桐山が充の下着に手をかけると、充はまた体を硬直させてしまった。
「や、やだ! やだよぉ!!」
無意識の内に充は叫んでいた。
先程よりも鮮明に嫌な記憶が甦ったのだろう。
桐山は下着から手を離すと、あやす様に充の頭を優しく撫でた。
握っていた手の方にも力を込める。
「あ…ボスごめん。俺…」
「いいんだ、気にするな」
充の体をもう一度仰向けに寝かせると、申し訳なさそうな顔をしている充に優しく口付けた。
震えが止まり、充の顔に僅かだが笑顔が戻ると、桐山は充の頭をくしゃくしゃっと強く撫でた。
「済まない、俺も服を脱ぐから少し待ってくれ」
「うん」
桐山は充の額に口付けてから体を起こすと、手早く着ている服を脱いでいった。
その間、充は桐山の適度に筋肉がついて白く透ける様な肌を持つ美しい体に見とれていた。
脱いだ服を全てベッドの下に投げ捨て、充と同じく下着一枚だけになると、桐山は充に覆い被さった。
充は桐山の背に両手を回して自分の方へ引き寄せる。
しばらくそのまま抱き合ってお互いの温もりを感じていると、桐山が自分の硬く膨らんだ股間を充の股間に擦り付けてきた。
「あ…何か変な感じ…」
下着越しにペニスとペニスが擦れ合う妙な感覚に、充は思わず体を捩らせる。
充が体を捩った事で更に股間が擦れ合い、充は声を上げた。
「あっ…ボス…ボスの、パンツ越しでもすごく熱くなってるの…分かるよ…」
「充のも熱くなってきているよ」
抱き合ったまま二人で腰をくねらせて、何度も何度も股間を擦り合わせた。
下着越しだが互いのペニスの熱と硬さを感じて酷く興奮してくる。
「充っ…」
桐山が荒く息を吐きながら、下着越しの少し物足りない快楽に堪えきれなくなったのか充の下着の中に手を滑り込ませてきた。
「ひゃんっ!」
桐山の少し冷たい手で熱くなったペニスを握られ、充は思わず声を上げてしまう。
まだ先程のショックが残っている所為か、いつもに比べたら少し硬さが足りないが、そこは先端から透明の汁を滲ませる程に
熱く膨らんでいた。
全体を手の平で包み込むように握ると、桐山は下着の中に手を入れたまま充のペニスをゆっくりと扱き始めた。
「ふぅ…ん…ボスゥ…」
桐山の手の中で、充のペニスは徐々にいつもの硬さを取り戻してくる。
「お、俺もボスの触るっ…」
して貰っているばかりで申し訳なく思ったのと、自分も手の平に直接桐山の熱を感じたくなり、桐山の下着の中に手を
突っ込んだ。
熱く滾るペニスを握り、改めてその熱と硬さに感嘆の溜め息をついた。
今度はお互いのペニスを扱き合った。
扱いている内に、先端を濡らしていた透明の汁はペニス全体に行き渡り、指先をもぬめらせていった。
「充…下着を脱がせていいかな」
もう下着を身に付けている事すらもどかしくなった桐山は、掠れた声で充に尋ねた。
「いいよ…」
充も桐山と同じ事を思っているのか、切なげな声で答える。
返事を聞いて桐山が充の下着をずり下ろすと、すっかりいつも通りに大きく反り返ったペニスが露になった。
「あ、俺も…」
充も桐山を真似て、下着をずり下ろす。
お互いに下着を剥ぎ取り生まれたままの姿になると、強く抱き合って唇を重ね、舌を絡めた。
唇を離すと、今度は直接ペニスとペニスを密着させる。
桐山の巨根と自分のモノが密着しているのを見て、充は何だか複雑な気分だった。
充のペニスは決して小さくはなかった。
むしろ平均より少し大き目なのだが、人並み外れて巨大な桐山のペニス(恐らく20cmはあるだろう)と並べると、やはり見劣り
してしまうからだ。
桐山は充がそんな事を考えているとは露知らず、ぴったりとペニスとペニスを密着させ、先程のようにゆっくりと腰を動かし
始めた。
「ハッ…あぁ…」
ヌルヌルになったペニスとペニスが擦れ合い、下着越しに擦り合わせていた時以上の快楽を感じた。
自然と腰が動いて、より強い快感を得ようとする。
新たに溢れ出た汁がお互いの先端を濡らし、二人の快楽を高めていく。
桐山は二本纏めてペニスを握ると、腰を動かしながら充と自分のペニスを扱き始めた。
「あっ…ボスだめ…そんなの凄過ぎるよっ…」
ダメと言いながらも、腰は自分のいいようにくにくにと動かしていた。
桐山の手の中で二本のペニスがどんどんと硬度を増していく。
「ん……っ」
「あ〜…あぁ〜っ…イクッ! ハァッ…あぁ〜っ!!」
一際高く声をあげると、二人は同時に意識を飛ばした。
放出された二人分の白濁液が充の胸や腹を汚していく。
「くぅ…ん…擦り合わせてただけなのに…イッちゃったよぉ…」
充は二人分の白濁液を見つめながら、恥ずかしそうに呟く。
桐山は枕元に手を伸ばしてティッシュを二、三枚取ると、充のへそに溜まった白いぬめりを拭き取ってあげた。
新しいティッシュを取って、充の白く汚れた部分を全てキレイに拭き取っていく。
「あっ、ボス待って!」
最後に桐山が自分の萎えたペニスを拭こうとした時、充が起き上がってそれを止めた。
「どうしたんだ?」
「あの…そこは俺が口でキレイにしてあげるよ。口直し…って言い方はボスに失礼かもしれないけど、俺、さっき口の方も
あいつらに…」
「分かった…でも、今ちょうど俺も充のを口でしようかと思っていたんだが…」
「じゃ、交代で…」
「いや、確か二人同時にする方法があっただろう。何て言ったかな…」
「それってシックスナイン?」
「ああ、確かそういう名前だった。それをやらないか?」
「え…でも、それってやっぱ俺が上だよねぇ。何か恥ずかしいな…」
桐山の顔を跨いで上に乗るのを想像して、充は恥ずかしさのあまりモジモジしてしまう。
「それなら俺が上でも構わない。どちらが上だという決まりはないんだろう?」
「ないけど…ボスにそんな恥ずかしい事させるのも何か悪いし…交代にするのじゃダメなの?」
「シックスナイン、してみたいんだが…」
「うー…じゃ、俺が上になるよ。ちょっと恥ずかしいけど」
「そうか…では早速」
桐山はベッドに体を横たえ、充が上に乗るのを待った。
「それじゃ、ちょっと失礼して…」
充は桐山におしりを向けるようにして上に乗り、恐る恐るその端麗な顔を跨いだ。
思わず今桐山の目から自分の姿がどんな風に見えているか想像してしまい、恥ずかしさで全身がカーッと熱くなる。
「やっぱり恥ずかしいよぉ!」
恥ずかしさに耐え切れず、充は桐山の上から下りようとしたが、桐山が充の腰をガシッと掴みそれを阻む。
「ボス離して! 恥ずかしいってば!!」
「そんなに恥ずかしがる事はない…絶景だ」
「もう! ボスの意地悪!!」
絶景と言われ、充の体はますます熱くなった。
心なしか肌も全身薄らと赤く色づいているようだった。
「それより、俺のを口でキレイにしてくれるんだろう? してくれないのかい?」
「する…」
出来るだけ今の体勢の事を考えないように、と自分に言い聞かせ、桐山の股間に視線を移した。
充のあられもない姿を見て興奮したのか、桐山のソコは少し回復して上向きになっていた。
軽く手を添え、ペロ、と一舐めする。
いつもの桐山の味だ。
口に含んで先端に舌を這わせると、まだ精液が付着している所為か苦味が口内に広がった。
口でするのは苦いし青臭くてあまり好きではなかったが、今はその苦味や青臭さも極上に感じた。
充は夢中で桐山のペニスにしゃぶりつき、愛しい人の味を堪能した。
桐山は充に奉仕して貰いながら、しばらくその卑猥な光景を眺めていた。
桐山のペニスをしゃぶっている内に興奮してきたのか、この体勢になってすぐの時よりも充のペニスは大きく膨らんでいた。
腹にピタリとくっつく程に反り返ったサオにツツーッと舌を這わせる。
「うっ…ふぅ…」
突然股間にぬめりを感じ驚いたのか、一瞬充の愛撫の手が止まる。
桐山は気にせず充のサオに舌を這わせ続けた。
股間の方に意識が集中してしまい、口や手がおろそかになってしまうが、何とか頑張って桐山への愛撫を続けた。
互いの股間に顔を埋め、夢中になって互いの性器をしゃぶる。
少し余裕が出てきたのか、充は桐山のペニスを咥えたまま、パンパンに張り詰めている陰嚢を手の平で転がす様に
弄り始めた。
桐山の体が僅かだがピク、と震える。
優しく揉みしだくと、桐山のペニスが透明な汁を滴らせながら口の中で体積を増していった。
桐山も反撃するように、充の陰嚢に舌を這わせ始めた。
桐山のペニスを握る充の手にギュッと力が込められる。
舌先で袋の中の二つの塊を交互につつく様に愛撫する。
あまりの気持ち良さに、充の愛撫がまたおろそかになってきた。
「あぁっ、あぁぁっ〜!」
おしりを両手で掴み、陰嚢から茶褐色の窄まりまで一気に舐め上げると、充は堪らず大きな声を出して体を震わせた。
おしりを掴んだままちゅくちゅくと秘部を舌で愛撫すると、充の愛撫の手は止まってしまった。
桐山のペニスを握り締めたまま、下腹に顔を埋めてハァハァと荒い息を吐いている。
意識は完全に下半身のみに集中していた。
充が何もしなくなってしまったのをつまらなく思ったのか、桐山は充の腰を掴むとそのままくるっと体を反転させた。
「な、何!? うわあぁっ!!」
体がぐるりと回転するのを感じ、驚いて目を開けた充の視界に陰嚢が顔にぴとっとくっつきそうな程の桐山の股間のアップが
飛び込んできた。
フェラチオする為に顔を近付けて間近で見た時以上の迫力だった。
下から見ているので、余計に迫力があるように感じるのかもしれない。
桐山は下から自分の股間をアップで見て絶景だと言っていたが、こんなグロテスクなモノのアップのどこが絶景なんだろう、
と充は頭を悩ませた。
そして、つい先程まで自分がこんな見ているだけで恥ずかしくなるようなアングルで見られていたかと思うと、今すぐこの場から
逃げ出したくなる衝動に駆られる。
充が股間のアップに怯んでいる隙に、桐山は目の前で透明の涙を流す充のペニスを咥えると、口の中でねっとりと舌を使って
愛撫し始めた。
桐山が愛撫を再開したので、充もまだ恥ずかしさが拭い切れないまま舌を出して桐山のペニスに奉仕し始める。

牛の赤ちゃんがお乳を吸う時ってこんな気分なのかな。

桐山のペニスに舌を這わせながら、充はこんな事を考えていた。
牛のお乳と違って、桐山のペニスは腹に擦れる程に反り返っていたので先端を咥えるのは困難だったが。
上下を逆転させた後も、お互いに股間に顔を埋め、唇と舌を駆使して相手の快感を高めていく。
先に充の限界が近付いてきたのか、充のペニスが桐山の口内でピクピクと痙攣し始めた。
よく見ると、陰嚢の方も溜まった欲望を早く吐き出したくて仕方ないのか、こちらも痙攣していた。
桐山は根元辺りを指で作った輪っかで扱きながら、口内では先端を集中して攻め立てる。
充の負担にならない程度に腰を動かして、充の口内にゆっくりとペニスを出し入れした。
自分の意思とは関係なく口内を出入りする巨根に、充はむせそうになるが必死に堪えて舌で一生懸命愛撫した。
しかし、桐山の口技がペニスが蕩けそうな程気持ち良くて、充の方の愛撫は次第におろそかになっていった。
桐山が軽く歯を立てながら先端を吸い上げると、充は桐山のペニスを咥えたまま達してしまった。
口内に流れ込んでくる充の精液を飲み込みながら、自分も達するべく腰の動きをもう少しだけ早めた。
「くぅ…!!」
充の精液を飲み終えたのとほぼ同時に、桐山のパンパンに張り詰めた陰嚢から尿道を通って充の口内に精液がほとばしった。
「ぐっ…う…っ…」
物凄い勢いで口内に流れ込んできた精液を充は何とか喉の奥に押し込んでいったが、途中でむせてしまいペニスから口を離してしまう。
まだ全てを出し尽くしていなかったそこは充の顔に容赦なく熱いシャワーを降り注いだ。
「うわ…ぁ…」
初めて桐山の精液を顔に受け、その熱さと雄特有の匂いに顔を顰めたが、射精の勢いを途中で止める事は出来ず桐山は
ブルブルッと体を震わせながら残りの精液を充の顔に注ぐのだった。
「済まない、顔にかかってしまったな」
体の向きを変えて充の顔を覗き込むと、桐山は申し訳なさそうに言った。
「俺が口離しちゃったから…ボスのなら顔にかかっても平気だよ」
桐山にティッシュで顔を拭いて貰いながら、充は微笑んで見せた。
キレイになった充の額に口付け、そのまま何度か口付けを交わす。
その後、桐山は体を起こすと充の足を折り曲げ、秘部が上に向くようにする。
シックスナインの時はよく見えなくて気付かなかったが、充の秘部はよく慣らさずに無理矢理突き立てられた所為で少し切れて
しまっていた。
他校生への怒りが再び込み上げてきたが、それを抑えて充の傷付いた部分にそっと舌を這わせた。
「イタッ…」
「痛かったか?」
「ちょっと染みるかも…」
「少し我慢してくれ」
「うん…」
桐山は傷を癒すように、切れた部分にたっぷりと唾液を塗り付けた。
桐山に舐められた部分が痛みで疼く度に、自分が強姦されたという現実を突き付けられているようで胸が痛んだ。
「ボス…」
「何だ?」
「ごめんね…そこ、ボスだけが入っていい場所なのに、他の奴等に入られちゃって」
「過ぎた事は俺にもどうする事も出来ないのだから、もう気にするな」
充がまた泣き出しそうになっているので、桐山は秘部を舐めるのを止め、充の頭を優しく撫でた。
「これからは俺だけ受け入れればいい」
「うん…もうボス以外の奴なんて絶対受け入れない。俺の中に入っていいのはボスだけだよ。だからボス…俺の中に来て」
「大丈夫か? 傷付いているのに」
「俺の中もキレイにして欲しいんだ」
「分かった…」
そう言って、桐山は枕元に置いてあるコンドームに手を伸ばした。
「そんなの付けちゃヤダよっ! あいつらだって何もつけないでムリヤリ…それに、ボスと俺の間に薄いゴム一枚でも間に入る
物があるのはイヤなんだ」
コンドームを取ろうとした手を、充は必死で止めた。
「充…」
「ボスを直接感じたいんだ」
「俺も…充を直接感じたいと思う」
桐山は手を引っ込めると、充の足を大きく開かせた。
そして、二回も射精しているにも拘らず、既に回復して少しも衰えることのないペニスの先端を充の入り口に当てがった。
傷付いた入り口を気遣うように、少しずつゆっくりと充の中へと入っていく。
充は痛みに耐えながら、桐山の全てを受け入れようと体の力を出来るだけ抜いた。
いつもなら挿入し終えるとすぐに充の足を抱えて激しく腰を動かす桐山だったが、今は充の中に自分のペニスを根元まで
収めると、腰を動かさずに体を密着させて充を強く抱き締めた。
充も桐山の背に両手を回して、その体をギュッと抱き締める。
「お腹ん中に、ボスの熱いの感じるよ…」
「俺も…今充の熱さを凄く感じる」
幸せそうに微笑む充を見て、桐山も胸の辺りが温かくなるのを感じた。
「ボス…動いていいよ。俺は平気だから」
「ああ…」
充に言われ、桐山は充と体を密着させたまま腰だけをゆっくりと動かし始めた。
充の肉壁に自分自身を擦り付ける様に、ゆっくりと動く。
「つっ…アッ…! ボスゥ…」
激しい動きがない分、快楽もいつもより控え目だったが、桐山と密着したまま一つに繋がっていられる事が何より嬉しかった。
じわじわと、痺れる様に下半身に快感が浸透していくようだった。
「ボス…あっ…お願い…イク時は…俺の中でイッてね。俺の中、ボスでいっぱいにしてね…」
喘ぎながら充が切なげな声で哀願した。
「ああ…俺も充の中で達したい…充の中を俺でいっぱいにしたい…」
途切れ途切れに桐山が答える。
いつもの倍以上時間をかけて、二人でゆっくりと登り詰めていった。
途中、充も桐山の動きに合わせて腰を動かし始める。
密着したまま高まっていくにつれ、このまま二人共溶け合って本当に一つになってしまうのではないかと錯覚する程二人の心と体は強く深く繋がっていた。
そして、二人は今までで一番熱く静かな絶頂を迎えた。
充は両足を桐山の腰に回し、桐山が自分から離れていかないように押さえつけながら、体をビクビクと震わせて桐山と
自分の胸を白く汚した。
それと同時に、桐山も充の体を強く抱き締めながら、充の中に自分の全てを注ぎ込んだ。
「は、ぁー…ボスの熱いので、俺の中いっぱいになってる…ボスが俺の中にいっぱい入ってきてるの、すごく感じるよ…」
トロンとした目つきでうわ言の様に呟く充に、桐山は何度も口付けた。
二人は繋がったまま、長い間抱き締め合っていた。

いつもなら、終わりが見えない程何度も充を求めてくる桐山だったが、今日はそれ以上求めてこなかった。
腕の中の充を愛しそうに見つめている。
充は桐山の腕の中で目を閉じて、桐山の鼓動を感じていた。
ふと充の鎖骨辺りに視線を移すと、自分が力いっぱい擦った所が、まだ赤くなっているのに気付く。
「まだ赤くなってるな…」
赤くなった部分を指先で撫でる。
「大丈夫だから気にしないでよ」
そう言って笑う充を見ていると、酷くこめかみが疼いた。
「あの時の俺はどうかしていたんだ。充があいつらに犯されたと分かった瞬間、頭の中が真っ白になった。
何も考えられなくなった。気付いたら、俺はあいつらに汚された充の体を強く擦り付けていた」
「ボス…」
「これは…俺が充の事を愛しているからなんだろうか? 教えてくれないか、充」
桐山に問われ、充は困った顔をして俯いてしまう。
ここで「そうだ」と言えば、桐山が自分を愛している事に出来るだろう。
でも、それは嫌だった。
「それは…俺が教える事じゃないよ、ボス」
充は顔を上げて桐山をまっすぐ見つめた。
「それは、ボスが自分で考えて出さなきゃいけない答えなんだ。俺が決めていい答えじゃない。
ゆっくりでいいから、うんと時間かかってもいいから、ボスがちゃんと自分で考えて答えを出して欲しいんだ」
「そうか…分かった」
「もし答えが出たら、その時は…どんな答えでもいい。俺に教えて。ボスが本当に俺の事どう思ってるのか知りたいから」
「ああ、その時はちゃんと充に話すよ」
「約束だよ、ボス」
そのまま二人は口付けを交わすと、身を寄せ合ったまま眠りについた。

この一件の後、月日が流れても桐山の答えは出ないままだった。
しかし、以前に比べて桐山はセックスの時とても優しく充を抱くようになった。
答えは出ないままだったが、性欲処理の為に抱かれているのではないか、という不安は充の中からすっかり消え去っていた。
あの時のセックスは、充の体の汚れた部分だけでなく、充の心の闇も浄化していたのだった。

+ + + + + +

以前日記で「賛否両論かもしれない」と書いた話はこのSSの事です。
私が書く桐沼はいつもただヤッてるだけな話になってしまうので、今回は「ボスは自分では理解していないけれど、
充の事を愛していてとても大事に思っている事」を前面に押し出した話を書こうと思いました。
賛否両論だと思ったのは「充が他校生に強姦される」というシーンを入れた事です。
「充がボス以外の人に犯されるなんて嫌」とか「強姦ネタ自体嫌い」という方も少なくないと思うので。
私自身書きながら、「充を他校生に強姦させなきゃ両想いな桐沼を表現出来ないのか」と悩みました。
充が涙を流すシーンがいくつかありますが、そういうシーンを書く度充に申し訳なく思ったし。
それなら書くなよ、って言われそうですが、せっかく思いついた話だし、これはこれでちゃんと書き上げたいと思ったので、
「こんな話書くなんてサイテー」と言われる覚悟でアップしてみました。
「充が他校生に強姦された」という設定は、ウチの桐沼の正式な設定ではなく、あくまでこの話だけの設定なので、
その辺は誤解しないでいただけると嬉しいです。
他にも「強姦された恋人をセックスによってキレイにする」ってネタはありがち、とか、強姦されたばかりの人間が自分から抱いてなんて言わない、とかいろいろツッコミ所があると思いますが、その辺は書いた本人が一番よく分かっているのでそっとして
おいてやって下さい(苦笑)
「あれから他校生は何もして来なかったの?」と思われた方もいるかと思いますが、そこはボスが裏で手を回して…
「存在そのものを抹消されなかっただけありがたく思え。もしまた充に手を出したり、この前の事を公言したらその時は…」
という感じで。
それと、ボスが答えを出せたかどうかは読み手の方のご想像にお任せします。
まぁ、答え自体はとっくに出てるんだけどね。
それをボスが自分で理解出来ないだけだから…



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