Sweet Valentine's Day〜沼桐ver.



「充、この後空いているかな」
一日の授業が全て終わり、充が帰り支度をしていると桐山が声をかけてきた。
「空いてるよ。何? どこか行くの?」
「ちょっと付き合って欲しいんだ」
「ボスの為ならどこでも付き合うよ。行こうか」
充は鞄を手に取ると、桐山と共に教室を出た。
「ボス、これからどこへ行くの?」
今日はバレンタインデーなので、充は桐山が自分にチョコをくれるつもりなのでは、と少しだけ期待していた。
お互い男同士だし、桐山は頭が良く知識も豊富だが、バレンタインとか一般的な事にはかなり疎かったので、多分貰えないだろうとは覚悟していたつもりだったが、本音は桐山からチョコをもらいたいのだ。
そんな充の予想を遙かに上回る言葉が桐山の口から発せられた。
「俺の家に来て欲しいんだ」
「え…ええーっ!?」
「ダメかな」
充が驚いたのを、家に行くのが嫌なのかと勘違いした桐山は悲しそうな顔をする。
「ダ、ダメじゃないよ! むしろ嬉しいくらいだよ!! でも…いいのか? ボス、何かいつもは俺とかみんなが家に近付いて欲しくないみたいなのに」
「父さんが昨日から出張で東京に行っていて明日まで戻らないんだ。それに…今日は特別だから」
「特別って?」
「……バレンタイン」
桐山は頬を少し染めて、恥ずかしそうに小さな声で言った。
「あ…」
充も恥ずかしそうにしている桐山を見て、何だか照れ臭くなり顔を赤くする。
「チョコレートケーキを用意してあるから、食べに来て欲しいんだ。ダメかな?」
「ううん、ボスが構わないならおジャマさせてもらうよ。ボスにバレンタインチョコ貰えるだけでも嬉しいのに、家に招待して貰える
なんて夢みたいだ…」
「でも、今後またこういう事があるとは思わないで欲しい。今日の事も、他の人には言わないと約束してくれるかい?」
「もちろん! ファミリーのみんなにも絶対言わないし、またいつかボスの家に行けるかも、とか期待もしないよ」
桐山は充の言葉を聞いて安心したような表情になり、無言で充の手を握ってきた。
充は桐山に向かってニッコリ微笑むと、自分の手を握る桐山の小さな手をキュッと握り返す。
そのまま二人は無言で桐山家に向かった。
桐山家の大きな屋敷が見えてくると、充はガラにもなく緊張してきた。
自分の住む世界とはまるっきり違うのだし、今まで謎に包まれていた桐山家に訪問するのだから、緊張しない方がおかしいが。
家の門に近付くにつれ、充の鼓動はどんどんと早くなっていったが、何故か桐山は門の前を素通りしてしまった。
「あ、あれ? ボス、家に入らないの?」
「すまないが、使用人用の入り口から入って貰えるかな」
「あ、そうだね…うん」
使用人用の入り口から入ると聞いて、自分はあくまでも桐山にこっそりと家に入れて貰う立場であって、門から堂々と入れる
立場ではないという事実を改めて突き付けられたような気がして、充は少しヘコんでしまう。
「充、こっちだ」
「うん…おジャマします」
裏口に着くと桐山がドアを開けてくれたので、充は恐る恐るそのドアをくぐった。
「和雄様、お帰りなさいませ」
「わっ!?」
中に入ってすぐに、初老の美しい女性の姿を目にして充は慌ててしまう。

いきなり見付かっちゃったよ!
ヤバい、このままだとボスに迷惑かけちまう!!

瞬時にそう考えた充は元来た道を走って逃げようとしたが、桐山が手を掴んでそれを止めた。
「ボス!?」
「ばあやは大丈夫だ。今日充を連れて来る事を知っている」
「沼井様ですか? 和雄様がいつもお世話になっております」
「あ、いえ…俺の方こそボス…じゃなかった、桐山君にはお世話になってます…」
充は戸惑いながらもばあやと呼ばれたその女性に挨拶した。
桐山の事を「桐山君」と呼ぶのが何だか変な気分だった。
「お茶の用意が出来てますので、どうぞこちらへ…」
ばあやに案内され、充は桐山と共に屋敷の中に入っていった。
「こちらです。どうぞ…」
充が案内された部屋は小さなテーブルと椅子が置いてあるだけのシンプルな部屋だったが、広さは充の部屋の倍はあった。
テーブルの上には既にティーポットとカップが用意されている。
「今ケーキをお持ちしますので、少々お待ち下さいませ」
そう言ってばあやが部屋を出て行ったので、二人は椅子に腰を下ろした。
桐山はカップに紅茶を注いで充の前に差し出す。
「ありがと…」
何だか落ち着かず、そわそわしながら充はカップを口に運んだ。
家で飲む紅茶とは香りが全く違っていて、味もこちらの方がずっと美味しく感じられた。
「お待たせしました」
充が一杯目の紅茶を飲み終えて桐山にお替りを貰っていると、ばあやがケーキを二人分持って戻って来た。
「どうぞ。ザッハトルテです」
「あ、どうも…」
目の前に生クリームを添えたザッハトルテが置かれ、充はばあやに会釈する。
「充、食べてくれ」
「うん、いただきます」
フォークで1口分切って口に運ぶと、ホロ苦いチョコの味と甘酸っぱいあんずジャムの味が口の中に広がる。
生クリームも、今まで食べてきたケーキのそれと同じ物とは思えない程美味しかった。
「どうだ? 充、美味しいか?」
「このケーキ、メチャクチャ美味しいよ! 俺、こんなに美味いケーキ食ったの初めてだよ!」
「良かったですね、和雄様」
ばあやに言われ、コクンと頷く桐山。
「沼井様、このザッハトルテ、和雄様が作られたんですよ」
「えっ!? ホントに? お店で売ってるヤツかと思ったよ」
「和雄様が、バレンタインに手作りのチョコレートケーキを食べて欲しい人がいるから、作り方を教えて欲しいと言われまして。
初めてなのに私が作るよりとても上手に出来てますわ」
「そ、そうなんですか? ハハ…」
ばあやは桐山がバレンタインに男にチョコをあげる事に疑問を持たないのだろうか、と充は考えたが、桐山がここまで信頼しているばあやなのだから、きっと養父に手を出されている事や、養父の取引先の人間に体の接待をさせられている事も知っているの
だろう。
そう考えると、ばあやが冷静でいるのも頷ける。
それと同時に、自分と桐山の関係もバレているのかと思うと急に恥ずかしくなってきた。
最後の方はケーキの味なんて分からなくなっていた。
「ごちそうさまでした。ボス、ありがとな。ケーキ、すっごい美味しかった」
充がニコッと笑うと、桐山はどことなく嬉しそうな表情になる。
ばあやはそんな二人のやり取りを、優しい笑みを浮かべながら見つめていた。
「それじゃ充、俺の部屋に行こうか」
「えっ? いいの?」
「構わないよ」
桐山が立ち上がり部屋を出て行こうとしたので、充もその後に続く。
「沼井様、ゆっくりしていって下さいね」
「ハ、ハイ…お茶、ごちそうさまでした」
ばあやにお茶のお礼を言って部屋を出ると、桐山に案内され桐山の部屋に向かった。
床にはフカフカの絨毯が敷き詰められており、桐山の部屋まで随分と長い距離を歩いた。
帰りも最後まで案内して貰わないと、一人では出口に辿り着けなさそうなくらいだった。
「ここだよ」
部屋に着いたのか、桐山がドアを開ける。
「おジャマします…」
充が入った部屋は、先程お茶を飲んだ部屋の数倍は広かったが、ベッドと机と僅かな家具があるだけの、
酷く殺風景な部屋だった。
勉強したり本を読んだりして、後は寝るだけのつまらない部屋。
桐山の部屋を見て、充はそんな印象を受けた。
「ベッドにでも座っていてくれ」
「あ、うん…」
どうしていいか分からず立ち尽くしている充に桐山が声をかける。
充がベッドに腰を下ろすと、桐山は鞄を机の上に置き、学ランを脱いで椅子にかけた。
そして、相変わらずキョロキョロ部屋の中を見回して落ち着きのない充の隣に腰を下ろす。
「どうしたんだ? 充」
「いや…いつもここでボスが生活してるんだなって思って」
「そうか…」
それだけ言うと、桐山は目を閉じて充の肩に頭を寄り掛からせた。
いつもならここで充が桐山の肩を抱いたり、何らかのリアクションがあるのだが、今日の充は肩に桐山の頭の感触を味わいつつもボーッとしているだけで何もしようとはしなかった。
充が行動を起こすのを、桐山は目を閉じたまま待っていたのだが一向に充が何もしてこないので、目を開けて充をじっと見つめた。
「ボス…」
桐山に見つめられている事に気付いた充は、そちらに顔を向ける。
桐山はいつもおねだりする時と同じ目で充をじーっと見つめていた。
自分の部屋だったら、こんな熱い視線で見つめられたらすぐにでも桐山をベッドに押し倒しているところだが、今日は桐山の部屋
なので遠慮してしまっているのだ。
「たまには俺が頑張ってみようか」
困った顔になって何もしてこない充に痺れを切らしたのか、桐山はベッドの上に膝立ちになって充の首に手を回しながら
そう言った。
「え、でも…ここでエッチとかして大丈夫なのかよ」
「構わない…」
言い終えると同時に、桐山は充の唇に自分の唇を重ねた。
充がおずおずと桐山の腰に手を回すと、桐山は自分から充の口内に舌を挿入し、今までにないくらい積極的に舌を絡めてきた。
充の後頭部を手で押さえて、貪るように口付ける。
こんなにも自分を求めてくる桐山を初めて目にして最初は戸惑っていた充も、だんだんと落ち着いてきたのか桐山の舌の動きに
合わせて自分も激しく舌を動かし始めた。
クチュクチュと音を立てながら、お互いの唾液を味わう二人。
そのあまりの激しさに、唇を離すと二人共まだキスしかしていないのに息があがっていた。
桐山は充の学ランを脱がせてそれを床にそっと落とすと、そのまま充の体をベッドの上に押し倒した。
「ボスに押し倒されるなんて、何か変な気分だな」
笑いながら、自分の固いベッドとは違う、ふわふわで柔らかい感触を背中で味わう。
「俺も何だか妙な気分だよ。でも、こういうのも悪くないな。充がしてくれるように上手く出来ないかもしれないが、
頑張らせて貰うよ」
そう言って桐山は充の喉をペロリと舐めた。
そのまま首筋に何度も口付ける。
「ん…」
桐山の唇が触れる度、充は何だか擽ったいようなむず痒いような気分になり体を捩った。
上着の裾を捲り上げると、桐山の愛撫に反応したのか、ピンと勃った充の胸の突起が外気に晒された。
桐山は少し舌を出して充の胸の突起を、まるで子猫がミルクを飲むようにペロペロと舐め始める。
「あっ…ぅん…何かくすぐったいよ」
気持ち良さより擽ったさの方が勝っているのか、充は笑いながら体を捩った。
「気持ち良くないのか?」
「気持ち良くない訳じゃないけど…愛撫され慣れてないから、何かヘンな感じで…」
「そうか…」
何か考えるような仕草をした後、桐山は今度は突起を口に含んだ。
チュッ、チュッと音を立てて吸ったり、時々甘噛みしたりして、充に快楽を与えていく。
「ふぅ…ん…アアッ!」
今度は気持ち良さの方が上回ったのか、充の口から吐息が漏れ始める。
桐山は両方の突起を愛撫しながら、器用にズボンと下着を脱いでシャツ一枚だけになると、充のズボンと下着にも手をかけた。
下着ごとズボンをずり下ろすと、ビンビンになった充のペニスが顔を出すかと期待していた桐山だったが、そこは予想に反して
あまり元気が良くなかった。
「充、やっぱり気持ち良くないのか? あまり元気がないようだが…」
まだ半勃ちのペニスを軽く擦りながら、少し悲しそうな顔で桐山が尋ねる。
「ごめん、ボス。気持ちいいんだけど、ここがボスの部屋だと思うと何か緊張しちまって…でも、気持ちいいのはホントだよ。
ボスがせっかくしてくれてるのに…ごめん」
桐山を悲しませてしまった充は、申し訳なさそうな顔で謝った。
「そんなに緊張する事はない。大丈夫だから。ここを自分の部屋だと思ってくれ」
そう言って桐山は、まるでペニスを元気付けるかのようにそこを優しく撫でた。
そして、先端から根元にかけてたくさんのキスを落としていく。
「あ…ボス…」
唇から桐山の優しさが伝わってくるようで、充の体から少しずつ緊張が解れてくる。
しばらくすると、唇で触れられただけなのに、充のペニスはいつもと同じ熱と固さを取り戻していた。
「やっといつもの充になったな…」
嬉しそうな表情でペニスにそっと頬擦りする桐山を見て、充は一瞬ドキッとしてしまう。
桐山は待ち望んでいたご馳走を与えられたかのように、大きくなった充のペニスをパクリと口に含んだ。
唇全体を使ってペニスを揉みしだく。
口内では舌先で先端の括れをなぞっていた。
「う…あ、あ、あぁぁっ…ボス…気持ちいいっ…」
桐山のねっとりと絡み付くようなフェラチオに、充は目を潤ませ嬌声を上げた。
桐山が口を動かしながらチラリと充を見上げると、顔を赤くして荒い息を吐きながら気持ち良さそうにしているのが視界に入り、
桐山は満足感を覚えた。
視線を感じた充は目を開けて、自分の分身に一生懸命奉仕する桐山を見た。
「ボス…今すっごい厭らしい顔してる…」
うっとりとしたような表情でペニスをしゃぶる桐山が酷く淫猥に見えて、充はそれを見ているだけでどうにかなってしまい
そうだった。
「厭らしいかい?」
「うん…そんなボス見てると、すぐにイッちゃいそう…」
「構わないよ」
充に頭や頬を撫でられ、心地良さそうな顔をしながら桐山は言った。
「お口の中、いい?」
コクン、と軽く頷くと、充がいつ達してもいいように再びペニスを口に含んだ。
今度は先端部分だけを口に含んで、根元は手で強めに扱く。
「くぅ…ン…ボスのお口、あったかくて柔らかくて…気持ち…いいよぉ…」
桐山の頭を撫でながら、充は全神経をペニスに集中させた。
口内の充のペニスが微かに痙攣し始め、桐山は充の絶頂が近いのを悟った。
充を更に追い詰めるように、ペニスの先端をちゅうっと強く吸い上げる。
「うぅんっ…も、出る…ボスの口ん中でイッちゃう! あ、あ、あ…出る、出るゥ!!」
無意識の内に桐山の頭を両手で押さえつけながら、充は絶頂に達した。
「んっ…ん…ふっ…」
桐山の口内に濃厚で塊のような精液が大量に流れ込んでくる。
桐山はそれを何とか喉の奥に押し込み、口を離した後も尿道に残った精液を扱き取った。
「ハァ…ハァ…ボスのお口気持ちいいから、濃いのいっぱい出ちゃった…」
「美味しかったよ、充」
手の甲で口の端を拭うと、桐山は少し恥ずかしそうにしている充に抱きつき、唇を重ねた。
桐山が充の体の上に寝そべるようにして抱き合いながら、何度もキスを交わす。
充は桐山のおしりに両手を伸ばし、軽く揉み始めた。
「あ…充…や…」
「ボスのおしり、すっごい柔らかくて女の子みたい」
充におしりを揉みしだかれ、桐山は充にしがみついて体を震わせた。
片手でおしりを揉みながら、桐山の秘部にそっと指を挿入すると、一瞬だがキュッと締まった。
「あれ? 何かココ、妙に解れてるね」
「…あ、んッ…あぁ…っ」
「ボス、もしかして俺のチ×ポ舐めてる間、自分でココ弄ってた?」
充に言われ、桐山は頬を染めて無言で頷く。
「そうなんだ…ボスのエッチ」
充が耳元で囁いた瞬間、桐山の肉壁は先程よりもキツく充の指を締め付けた。
「あ、今ボスのおしりキュッて締まった。エッチって言われたのにコーフンしちゃったの?」
桐山は恥ずかしくて堪らないのか、何も言わず充の胸に顔を埋めてしまう。
「自分でしなくても、俺がいっぱい弄ってあげるのに…こうやって」
充が中を掻き回すように指を動かすと、充の腹の上の桐山の体がピクピク跳ねる。
「わ、すごい…もう二本も指入っちゃうよ」
「くっ、ふぅ…充…そろそろ…」
「欲しくなった? ここに俺のチ×ポ入れられたいの?」
「ああ…だから…」
「分かった。今してやるからな」
そう言って充は桐山のおしりから指を抜き起き上がろうとしたが、桐山に止められてしまった。
「ボス?」
「今日は俺が頑張ると言っただろう?」
充の体をベッドに押し付けたまま体を起こすと、桐山は充の股間を跨いでペニスの先端を自分の秘部に当てがった。
「ふっ……く」
そのまま腰をゆっくりと下ろして、充のペニスを飲み込んでいく。
桐山の秘部はすっかり解れていたので、根元まで飲み込むのにさほど時間はかからなかった。
体内に充のペニスを根元まで収めた桐山は、すぐに腰を前後に動かし始めた。
気持ち良くなりたい一心で、必死に腰を動かしているように見える。
「くっ・・・ぅあ・・・っ」
「う…んっ…自分からそんな腰振っちゃって…ハッ…あ…ホント、ボスってばエッチだよな」
充がニヤニヤ笑いながら下から突き上げるように腰を動かすと、桐山の口から小さな悲鳴が漏れる。
「充…充は気持ち…いいか?」
「気持ちいいよ…だって…ん…ボスのおしりが俺のチ×ポをキュウキュウ締め付けてるんだもん」
「それなら…良か…た…アァ…」
「でも…」
「でも? …あっ!」
充は桐山の腰を両手で掴むと、繋がったままくるりと二人の体を逆転させた。
「充?」
いきなり体をベッドに押し付けられる体勢になり、桐山は目を見開いた。
「ボスがしてくれたの、すっげー気持ち良かったけど、ヤラれっぱなしなのは性に合わないみたいだ」
驚いている桐山のシャツのボタンを外していき、前を肌蹴る。
「俺もボスに愛撫してあげたいから」
そう言って充は桐山の胸の突起を弄り始めた。
「充っ…それはいいから…」
繋がったままなのに、腰を動かさず胸ばかり愛撫してくる充がまどろっこしいのか、桐山は求めるような視線で充を見つめた。
しかし、充はそんな桐山の気持ちに気付いていないのか、それともワザとやっているのか、ただ胸の突起だけを弄り続けていた。
「充…何で…」
耐え切れなくなった桐山は、自分で腰を動かして何とかより強い快楽を得ようとする。
「あっ、何腰動かしてんの? ボスのスケベ!」
「つっ…アッ…アアアッ!!」
充が両方の突起を指でキツめに摘むと、それが刺激になったのか桐山は一人で先に達してしまった。
充は先程桐山に口でしてもらったおかげでまだ少し余裕があったが、まだ一度も達していなかった桐山には限界だったのだろう。
自分の胸を白く汚した桐山は、少し涙目になりながらハァハァと荒く息を吐いていた。
「ボス、先にイッちゃったね。我慢出来ないくらい感じてたんだ。でも、俺まだだから、ちょっとだけ我慢してね」
まだぐったりしている桐山の両足を抱えると、充はこの時を待っていたかのように激しく腰を動かし始めた。
「!? や…待て充っ…あ…ぁん…まだ動くなっ…」
「ダメ…もう待てないっ…」
「今達した…ばかりでキツ…い…んっ…」
「そうだね。ボスん中、いつも以上にキツキツだよ」
達したばかりで体が敏感になっているところに強い刺激を与えられ、精液を吐き出して萎えていた桐山のペニスは
すぐに元の固さを取り戻した。
ギシッ! ギシッ! とベッドのスプリングが軋む音が、充の動きの激しさを表していた。
「ボス…俺もう…中、いいか?」
「中に…出してくれ…充…充の全部、中に…」
「分かった…ボスん中にたっぷりと注いでやるからな…」
充が奥を突くように腰を動かすと、桐山は眉を顰めてシーツをグッと握った。
「ボスっ…あぁ、イク、イク、イっちゃう! イっちゃうよ! あっ! あぁ・・・あぁ〜・・・あ・・・ぁ・・・」
桐山の体をギュッと抱き締めると、充はそのまま絶頂に達し、桐山の中を精液で満たしていった。
「みつ…あぁぁぁぁ!! …っ…い…ぁ」
桐山も充の頭を強く抱き締めながら二度目の絶頂を迎えた。
桐山の放った精液が二人の胸や腹を白く汚したが、そんな事は気にもならないのか、そのまましばらくの間二人はハァハァと
息を弾ませながら抱き合っていた。

「すまないな、充。風呂を使わせてやれなくて」
「いいよ、気にすんなって。ばあやさん以外の人に見付かったらマズいんだろ?」
後始末を終えた後、二人は裸のままベッドで寄り添っていたが、あまり長居は出来ないので名残り惜しいが充は帰宅する事に
したのだ。
今は桐山に見送って貰い、先程入ってきた使用人用の入り口に立っている。
「俺、今日はホント嬉しかった。ちょっとだけど、知らなかったボスの一面が見れて。見付かったらマズいのに、
わざわざありがとな」
「こんな機会は、もうないかもしれないからいいんだ…」
「そっか…」
改めて桐山と自分の身分の違いを感じさせられ、充は少し淋しそうな表情になる。
「それじゃボス、また明日な」
「ああ…また明日」
軽く口付けを交わし、充は桐山家を後にした。
充が帰り道を何となく切ない気持ちで歩いていると、誰かが自分を呼ぶ声が後ろから聞こえて振り返る。
「沼井様!」
「ば、ばあやさん!?」
走って追ってきたのか、ばあやは苦しそうにしていた。
「だ、大丈夫…ですか?」
「あ…はい、大丈夫です。これをお渡しするのを忘れていて…」
ばあやが充に差し出したのは、白いケーキの箱だった。
「和雄様が作られたケーキの残りです。お家で召し上がって下さい」
「あ…わざわざどうも…」
「それと、沼井様に一言言いたい事がありまして…」
「俺に…ですか?」
きっと、桐山がいいと言ってもあまり近付くな、とかそういった類の事を言われるのだろう。
充はそう覚悟していたが、ばあやの口からは意外な言葉が発せられた。
「これからも、和雄様と仲良くしてあげて下さいね」
「えっ…でも…でもさ、見りゃ分かるけど、俺、こんな不良だよ? それでもいいのかよ」
「…あなたやあなたのお友達が和雄様としている事は悪い事かもしれない。でも、いいんです。
和雄様は、まだ知らない事が多過ぎるから…世界のありとあらゆる事を知っていても、もっと大事な何かを…
和雄様は知らないんです」
「………」
「和雄様は、昔はあまり家の者とは口を聞かなかったんです。でも、いつからか、少しだけその日あった事を話して下さるように
なったんです。そのお話、いつも沼井様の事ばかりなんですよ」
「ええっ!?」
「沼井様と出会ってから、和雄様は変わられました。している事は悪い事かもしれないけれど、心はいい方向に変わられたと
思っています。沼井様の事を話している和雄様の嬉しそうな顔、私、初めて見ました。だから、これからも和雄様の傍にいてあげて下さいね」
「もちろんだよ! 俺、ボスの事大好きだから、これからもボスの傍にいるよ! あ…」
充は自分の言葉遣いと言った内容に気付き、気まずそうに口を塞ぐ。
「そんなに想ってくださる方がいて、和雄様は幸せだと思います。それでは…」
充が思っている程二人の関係について気にしていないのか、ばあやは優しい笑みを浮かべると桐山家に戻っていった。
ばあやが立ち去った後も、充はケーキの箱を持ったまましばらくボーッとその場に立ち尽くしていたが、元来た道を引き返して
桐山家の正門の前に向かった。
改めて見るとその門は大きくて、それが桐山と自分の間にある壁のように感じられた。
「俺…いつか絶対強くなって…ボスの親父よりも強くなって、この門から堂々と入れるような人間になってやる。
そして、絶対ボスの事幸せにしてみせる!」
充は自分自身への誓約のように、力強い口調でそう言った。
身分違いの恋に身を焦がすなんてバカげた事だと思っていたが、この想いは抑えられそうにない。
自分の気持ちを口にしてスッキリしたのか、先程までの切ない気持ちはすっかり消えていた。
充はケーキの箱を大事そうに抱えながら、桐山家を後にした。

+ + + + + +

実はこの話、前から書きたいと思って温存してた話だったんですよ。
最後のトコの充とばあやのやり取りと、充が桐山家の前で宣言するシーンが書きたかったんです。
でも、その部分と「充がボスの家に招待される」って事しか決まってなくて、細かい部分がなかなか決まらなくて書けずに
いたんです。
ホントは沼桐バレンタインネタは、桐沼バレンタインネタが裸エプロンだったんで、メイドの格好したボスが充にご奉仕ってのを
考えていたんですが、前から考えていたこのネタが使えそうなのでこっちにしました。
書きたいシーンが健全なので、「別にエロシーン入れなくても、普通にケーキ食べてさよならでも良かったのでは?」
と思われる方もいるかもしれませんが、そこはねぇ…やっぱり私としてはエロ入れたかったんで(苦笑)
ちなみに、充が帰った後部屋に戻ったボスは、ベッドに残った充の匂いを嗅いで何だか切ない気分になった、という事にしてますv
作中で充が考えている通り、ばあやはボスが養父に手を出されてる事とか、充と深い関係だという事を知っています。
でも、ご主人様のする事には逆らえないので養父との事は見て見ぬフリ、充との事は桐山がいい方向に変わってきているので
陰ながら応援するつもりでいるようです。
この話を見る限りだと、一番桐山の事を理解しているのは実はばあやだったりして。



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